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3月15日のまにら新聞から

ウクライナ侵攻は比経済直撃 英シンクタンクが指摘

[ 1176字|2022.3.15|経済 (economy) ]

英シンクタンクが比の2022年のGDP成長率予測を8.0%から7.2%に引き下げ

 英ロンドンに拠点を持つシンクタンク、キャピタル・エコノミクスは11日、ロシアのウクライナ侵攻が世界経済、特に石油製品に与える影響は、個人消費を直撃し経済成長鈍化という形でフィリピンにも波及するだろうと指摘した。

 キャピタル・エコノミクスは12カ国を対象とした報告書の中で、比の2022年の国内総生産(GDP)成長率予測を前回の8.0%から7.2%に引き下げ、他のアジア8カ国の予測も引き下げた。インドネシア、マレーシア、シンガポールについては、紛争の影響は「ごくわずか」であるとして予測を維持した。

 しかし、この数値については比政府の目標である7.0〜9.0%の中にとどまっており、ベトナム8.8%、バングラディッシュ8.0%に次ぐ。また同シンクタンクは2023年の比のGDP成長予想は8.5%に据え置いている。

 同シンクタンクのシニアエコノミスト、ガレス・レーザー氏は、「比を始めとしたアジアの大半を占める石油輸入大国にとって原油価格の高騰はGDPに占める貿易赤字の拡大を意味し、インフレ率の上昇も懸念される。ひいては労働者の実質所得の減少となる」と指摘。

 同シンクタンクは比の2022年のインフレ率の予測を前回の4.0%から4.3%に引き上げた。この数値は比中央銀行(BSP)の管理可能な物価上昇率の目標範囲2.0〜4.0%を上回る。

 レーザー氏は、「実質所得の減少で必ずしも消費が減少するとは限らない。比政府はすでに原油価格の高騰による負担軽減のため、公共交通の運行者や運転手、農漁民に対し燃料補助金を支出する予定だ。比は過去にもこうした政府の支援で消費を支えてきた。実質所得の減少は多少の消費意欲を弱めるが、その影響はそれほど大きくはないだろう。それは新型コロナの規制緩和によって相殺されるだろう」と付け加えた。

 また、ワシントンに本拠を置く国際金融協会(IFF)は10日の報告書で、「我々の基準では、フィリピン、ブラジル、インドネシア、インド、コロンビアは、ロシアのウクライナ侵攻による経済への影響は他の新興国よりうまく緩和されているように見える」と述べている。IFFの試算では、比のウクライナとロシア両国への輸出入はごくわずかである。

 一方、「ESG(環境、社会、ガバナンス)指標では、南アフリカ、インドネシア、フィリピンはいずれも、社会経済が石油に大きく依存しているため、脱炭素、環境保護などさまざまな課題に直面している」とし、「しかしそれはまだ二酸化炭素排出量を削減のため国内の再生可能エネルギーに資源を集中させる余地がかなり残っているということだ。つまりこれらの国は、今回の紛争により世界が再生可能エネルギーへの移行を速めれば、金融支援やその成果など大きな恩恵を受ける可能性がある」と指摘した。(渡辺誠)

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