比発電3カ所が廃止勧告リストに 石炭火力発電所廃止メカニズム ADB
アジア開発銀行がCОP26で発表した石炭火力発電所の廃止メカニズムで比のカラカ火力発電所など3発電所が最優先リストに含まれていることが判明
アジア開発銀行(ADB)は3日、英グラスゴーで開催中の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(CОP26)において東南アジアで石炭火力発電所を買い取り、15年ほどかけて廃止することで二酸化炭素の排出量を削減するエネルギー転換メカニズム(ETМ)を実施すると宣言した。それを受けて日本政府も同日、この取り組みに2500万ドル(約29億円)を拠出すると発表した。
このメカニズムでADBのコンサルタントが最近まとめた経営権を買い取って廃止させることを勧告した石炭火力発電所の最優先リストの中に、フィリピンではカラカ火力発電所(バタンガス州)など3カ所の発電所が含まれていることが判明した。3日の英字紙インクワイアラー電子版が報じた。
ETМで比から廃止最優先リストに掲載されたのは、DМCIグループが所有するSEМカラカ発電所(最大発電量600メガワット)の他に、パーム・コンセプション・パワー(PCPC)所有の火力発電所(同135メガワット、イロイロ州)とミンダナオ地方東ミサミス州にある国営火力発電所(同232メガワット)。この他にもパンガシナン州にあるスアル火力発電所(1294メガワット)やケソン州パッグビラオ火力発電所(1185メガワット)など7カ所の石炭火力発電所も優先リストに含まれた。
比国内には現在、石炭火力発電所が28カ所あるが、最優先や優先リストに含まれた10カ所は国内石炭火力発電所の総発電量5900メガワットの54%を占める。この中でも電源の規模や企業価値、経営状況などから最優先はカラカ発電所とPCPC発電所、東ミサミス州の国営発電所で、ADBは廃止へ向け、支援と引き換えに勧告するとみられている。
ドミンゲス財務相は今年4月の国連気候サミットに出席した際、ミンダナオ島にあるすべての石炭火力発電所を政府が買収し廃止させるための基金を創設する可能性に言及した。これは同島中部にあるアグス水力発電所の再整備事業が完了しここからの電力供給でミンダナオ島の電力需要を満たせるとの見通しに基づいた計画だった。しかし、クシー・エネルギー相は10月25日、「ミンダナオ島の石炭火力発電所はいずれも2015〜17年に操業を開始するなど比較的新しく、これらを廃止させることは検討していない」と発言するなど政府内でも見解の相違が大きい。(澤田公伸)