コロナ前越える経済目指す 比経済セミナーで中銀総裁
日本の投資家に向けた比経済セミナーで中銀総裁「コロナ前越える経済目指す」
日本の投資家に向けた「フィリピン経済セミナー」が7日、オンラインで開催され、駐日比大使や比政府の経済トップが日本の企業や金融機関の関係者ら約300人に、比の経済状況や今後の成長見通しを報告した。
同セミナーは三井住友銀行(SMBC)、SMBC日興証券、比中央銀行による共催。SMBCは1975年から比へ進出、SMBC日興証券は、比政府が昨年3月に発行したサムライ債の単独主幹事を務めた。
ベンジャミン・ジョクノ中央銀行総裁は「中銀は国内総生産(GDP)の12・5%に当たる2兆2000億ペソ(440億ドル相当)を金融機関に注入したが、まだ回復は始まったばかりの段階にある。景気の春が来ている証拠を見るまでこの政策は続けていく」と述べた。「比が目指すのは、コロナ禍で失ったものを取り戻すことだけではなく、より技術的に高度で、より持続可能で、より包括的な『ポストコロナエコノミー』を目指している」との認識も示した。
国家経済開発庁(NEDA)のカール・チュア長官は、過去5年余りのドゥテルテ政権について、コロナ禍以前に「600万人を貧困から救い上げた」とし「失業率も不完全雇用も過去最低を達成していた」と振り返った。同長官によると、現政権下でインフラ支出や人材開発、科学や芸術、性と生殖に関する健康(リプロダクティブヘルス)などへの包括的な改革が行われた結果、「コロナ禍前に強固な経済基盤が形成された」。また日本が主要なパートナーでもある現政権の「ビルド(建設)・ビルド・ビルド」によるインフラ事業が、「これからの景気回復にとって大きな成長ドライバーとなるだろう」とも述べた。
ドミンゲス財務相は「経済問題と新型コロナ対策との間でバランスを取る政府戦略が、今後の急速な経済成長への原動力になる」とし、今年第2四半期の比経済が前年同期比11・8%の成長率を記録したことが、「バランス戦略による成果」との認識を示した。同相によると、現政権は任期中に、持続可能な企業年金制度の構築によって資本市場の深化を推進し、経済にダイナミズムをもたらし、より多くのイノベーション、より優れた製品やサービス、そして雇用を促進していく。そのために「外国投資法(FIA)、公共サービス法(PSA)、小売自由化法(RTLA)の改正を求めていく」とも語った。
また、ラモン・ロペス貿易産業相は、65年間に及ぶ両国の良好な関係が「投資環境にも現れている」とし、製造業やエレクトロニクスの深い結びつきを挙げて「コロナ禍であっても2020年には日本が依然第2位の貿易相手国」だとも強調した。そして日本から比への有望な投資分野として、農業技術やロジスティクス、GDPの5・2%を占めるという建設セクター、それに住宅産業、輸送セクター、電力、ヘルスケア設備などを挙げた。特に今後はバイオマスや太陽光、風力といった再生可能エネルギー(RE)に注力し、国内に25カ所あるというREゾーンへの投資を呼び掛けた。(岡田薫)