VAT新規則を一時凍結 財務相が「見直し」明言
VAT新規則の実施を一時的に凍結するとドミンゲス財務相が明らかにした
輸出業者による原材料や部品などの国内購入にも12%の付加価値税(VAT)を課すフィリピン内国歳入庁(BIR)の新歳入規則について、ドミンゲス財務相は21日、オンライン会議に出席した際、「われわれはそれ(新規則)を見直す」とした上で「(輸出業者へのVAT課税実施は)厳密に言うと延期される」と述べた。比の財界や外国人商工会議所連合などが「比国内の競争力をさらに低下させ、外国人投資家の流出を引き起こす」と強く反対し、政府に同規則の即時撤廃を求めていた。
22日付英字紙マラヤによると、業界筋の情報として、VAT課税の実施凍結は21日に発効したとしており、同規則が発効した6月27日までさかのぼることはできないという見解も示している。
22日付英字紙マニラブレティンによると、財務相は「見直しは今月中にすぐに終わる」とも述べており、見直しの結果次第ではBIRの新規則が再施行される可能性もないとは言えない。しかし、同相は、今回のVAT新規則の根拠となっている税制改革法第1弾「加速と内包的成長のための税制改革(TRAIN)」(2018年1月発効)と税制改革法第2弾「企業復興税優遇措置法(CREATE)」(今年4月発効)における国内購入向けVAT税に関する条項で明らかに矛盾があることを認めたという。
新法のCREATEでは、投資促進機関への既存登録プロジェクトで「直接的かつ限定的に使用される物品・サービス」の輸入ないし国内購入はVATの対象にならないことが記されている。一方で、6月27日に発効したBIRの新歳入規則では、輸出型企業向けの「間接輸出」はVAT12%の対象になると規定しているが、VATの課税対象範囲は必ずしも明確ではない。
日系企業などが多数進出する特別経済区などを管轄するフィリピン経済区庁(PEZA)のプラザ長官は「VAT課税の実施延期に関する通知などはまだ受け取っていない」とした上で「PEZAとしては新規則の実施延期ではなく、完全に撤廃されることを期待している」と述べている。
BIRの新規則については、フィリピン半導体・エレクトロニクス産業協会(SEIPI)のダン・ラチカ会長が会見で、VATによる追加コスト発生のため「原材料などの調達を海外に移した方が安くなる」とみて準備を進めている多国籍企業が相次いでいると説明。海外に移る調達額は同業界だけで「最大280億ペソになる。1〜5万人の労働者の離職が起きる可能性がある」と懸念を示している。(澤田公伸)