外資最低資本で対立 20万ドルか100万ドルか
小売自由化を巡る上下両院それぞれの法案で最低払込資本金額が大きく違う事態に
フィリピン国内の小売業に対する外資規制を定めた小売業自由化法(2000年制定)を改正する議会上下両院の各法案が通過したが、外資による最低払込資本金をめぐる条項で上院法案が100万ドルとなっているのに対し、下院法案が20万ドルまで引き下げており、規制緩和のトーンが両院で大きく異なっている。外国人商工会議所連盟(JFC)が「下院法案を支持する」との書簡を上下両院に提出する一方、国内の小売業者組合などは上院法案支持を打ち出しており、国内外の資本家や中小零細企業を巻き込んだ論争となりそうだ。
小売業自由化法では外国資本100%で比の小売業に進出する場合には、最低払込資本金として250万ドル(日本円で約2億7千万円)が義務付けられるなど障壁が維持されている。
27日付英字紙マニラブレティンによると、在フィリピン日本人商工会議所も加盟するJFCは、書簡で「上院法案は、世界的な経済不況の中で新しい外国投資を呼び込むのに大きな障害となる」と警告している。同書簡は、上院法案の条項がインドネシアやベトナム、カンボジアやシンガポールなど近隣諸国よりもかなり高い保護主義的な水準にどまっていると批判。パンデミックの経済低迷から回復するためにも改正法によるインパクトが必要だとしている。
一方、フィリピン小売業者組合(PRA)のクラウディオ副会頭は、上院議会が当初、改正法案審議で最低払込資本金を30万ドルまで引き下げていたものの、その後、100万ドルまで引き上げたことを評価するとした上で「上院法案の承認で、中小零細企業を犠牲にすることなく、外国投資による進出を歓迎することができる」との声明を発表した。
今後、両院協議会で2つの小売業自由化法改正案のすり合わせを行うことになるが、同組合は「下院側が上院法案に歩み寄ることを期待する」としている。
比の小売業界は1954年に制定された小売取引法によって外国資本による小売業への参入は完全に禁止されてきた。
小売業自由化法が制定されて以降も最低払込資本金などの規制により、外資の小売業による投資はなかなか進んでこなかった。JFCによると、2000年以降も外資による比小売業への投資案件は毎年、平均で2件ほどにとどまっており、国内の雇用創出にも貢献できていないという。(澤田公伸)