1年で4分の1減る 今年は豚肉39万トン輸入へ
アフリカ豚熱などで豚飼育数が972万頭に減少。25年ぶりの低水準
フィリピン統計庁は9日、国内の豚飼育数が今年1月1日時点で972万頭で、前年比で24・1%減少、25年ぶりの低水準となったと発表した。アフリカ豚熱(ASF)感染拡大の影響によるもので、豚肉の出荷量が減り、小売り価格の記録的な高騰を招いている。
こうした中で、農務省は今年の豚肉の輸入量を約39万トンに引き上げる計画だ。10日付英字紙ビジネスミラーが報じた。
▽商業養豚42%減
飼育数で約7割を占める零細の「裏庭養豚」による飼育数は前年比13・3%減の690万9千頭で1994年(676万6千頭)以来、最低を記録した。
規模の大きい商業養豚場の飼育数は280万6千頭で、前年比41・8%減と裏庭養豚よりも大きく落ち込んだ。商業養豚は2002年(271万7千頭)以降で最低となった。
飼育豚の種類別では、肥育豚(生後5カ月以上)は254万7千頭で前年比26・7%減、育成豚(生後2カ月以上5カ月未満)は239万4千頭で同28・9%減、母豚(生後6カ月以上のメス)は142万8千頭で同19%減。
▽新たに8万頭処分
11日付英字紙スターによると、比国内でアフリカ豚熱(ASF)が新たに173件発生し、8万4064頭の豚が殺処分された。
国際獣疫事務局(WOAH)への第13次報告書では比のASFの発生件数は累計で7845件。比政府の記録では50万頭以上の豚が殺処分されたとされているが、養豚業界関係者によると、失われた豚は400万頭以上という。
新たな感染では、南イロコス州タグディン町で5352頭、イサベラ州カワヤン市で4379頭、同州カバトゥアン町で3925頭が殺処分されている。
▽輸入量、急きょ変更
一方、ダール農相は9日の会見で、ミニマムアクセス量(最低輸入量、MAV)の諮問委員会で8日、豚肉不足の穴埋めに38万8790トンの輸入が認められたことを明らかにした。
比の今年のMAVは5万4千トン(現行関税率30%)で、農務省は輸入量の16万4千トンへの引き上げを先に提案していたが、その2倍以上に変更した。
農相は「豚肉の今年の需要160万トンに対し、国内の養豚では120〜130万トンしか供給できないため」と説明。同諮問委員会の一部委員は輸入業者だけでなく、養豚業者にも輸入を認めることを検討しているとも述べた。
農相によると、輸入量の引き上げには今後、MAV管理委員会の承認が必要。その後、大統領に勧告し、大統領が決定後、議会の承認も必要となる。大統領はすでに輸入量を増やす提案を原則として承認しているという。
▽輸入品にも上限価格?
また、ロペス貿易産業相は9日、輸入豚肉の価格上限についても農務省と調整していることを明らかにした。スーパーや食料品店で売られている輸入豚肉の価格についても、大統領令第124号の「価格の上限まで下げることを期待している」と述べた。
大統領令では、国産の豚肉価格の上限はカシム(肩ロース)とピギー(外もも)が1キロ270ペソ、リエンポ(ばら)が同300ペソとなっている。(谷啓之)