ビジネス環境調査
前年の133位から108位へ躍進も、域内5カ国には及ばず。起業と投資家保護に課題
世界銀行は29日、世界189カ国・地域を対象にしたビジネス環境調査2014年版の結果を発表した。フィリピンは、信用情報へのアクセス改善や納税手続きの一部電子化などが評価され、前年の133位から108位へ躍進した。しかし、東南アジア諸国連合(ASEAN)域内のシンガポール(1位)、マレーシア(6位)、タイ(18位)、ブルネイ(59位)、ベトナム(99位)には及ばず、特に起業や投資家保護の分野で課題を残した。
調査は12年6月〜13年5月に収集された10項目のデータを基に、各国・地域における「ビジネスのしやすさ」を数値化した。10項目は、起業、建設許可取得、電力確保、不動産登記、資金調達、投資家保護、納税、対外貿易、契約履行、撤退・破綻処理で、手続きの回数や必要な日数、手数料などを比較した。
項目別で、比の評価が比較的高かったのは、配電開始までに要する日数、コストの「電力確保」(33位)と輸出手続きに必要な書類数、日数の「対外貿易」(42位)。前年の順位はそれぞれ33位、41位で、変動はほとんどなかった。
改善が見られたのは、「資金調達」と「撤退・破綻処理」、「納税」の3項目で、それぞれ前年の126位から86位、164位から100位、144位から131位へと順位を上げた。
投資家の動きを鈍らせる要因として、特に目立ったのは「起業」の170位。アキノ現政権は、手続き簡素化などに取り組んでいるが、前年の166位からさらに順位を下げた。残り4項目は、建設許可取得99位、契約履行114位、不動産登記121位、投資家保護128位。
世界最低レベルの評価だった「起業」について、世界銀行の小西基夫フィリピン事務所長は、「(総合順位6位の)マレーシアで起業する場合、3種類の手続きと6日間を要するだけ。比では15の手続きに35日間かかっており、大きな改善が必要な分野」と指摘した。
総合順位に関しては「11年前の調査開始以来、比の順位は最も大きく上がった。政府が民間セクターと連携しながら、改革と努力を継続した結果だ」と評価した上で、「労働人口の95%は自営業、もしくは中小企業の従業員。雇用創出の鍵を握っているのは中小企業であり、ビジネス環境整備を通じた企業の育成が必要不可欠」とさらなる改革を促した。
比の総合順位は、アロヨ前政権末期の09年版140位、10年版144位だった。アキノ現政権発足以降は、11年版148位、12年版136位、13年版133位。(酒井善彦)