比と群馬で培う世界観を作品に アート活動広げる山形敦子さん
数年前まで比を本拠点としていたアーティスト山形敦子さんは、群馬県に移住し比での出品も続けながら「アーティスト・イン・レジデンス」として活動を広げている
一定期間ある土地に滞在し作品制作を行う「アーティスト・イン・レジデンス」として活動している山形敦子さんは、数年前までフィリピンを本拠点としていた。現在は群馬県に移り住んでいるが、比を拠点とした活動も続けている。
今年2月に開催された比最大のアートフェア「ALTフィリピン」にも、群馬県で制作した作品を出品。2021年の比での個展では「目に見えていないだけのもの」を、素材が偶然作り出す模様などを使って作り上げる「細胞」で表現し、それ以降の作品の多くで様々な「細胞」を生み出してきた。山形さんは「地域に根付いた昔話や昔からある物語に興味があり、群馬県に住み始めてからはそういった世界観とこれまで膨らませてきたミクロの世界を掛け合わせて作品を制作している」と話す。
ATSフィリピン出品に向けたアート関係の来比は2年半ぶり。コロナ禍の外出規制が厳しい時に帰国したため、週末のモールの人混みやお店の前の長蛇の列を見て「街に人が戻ってきている」と感じた。アートシーンにおいては、「2年経つと若いアーティストがどんどん出てきているが、活気は以前と変わらない」との印象を語った。
個展やギャラリー展示のほか、2019年には、比文化センターで比人アーティストのマービー・プエブロさんと2人展を開催した。「日本での活動と両立が難しいのが課題だが、ずっとやってきた比でのご縁はなくしたくない」と、在比中に所属していたギャラリーから今後も出品を続ける。まだ企画段階だが、プエブロさんと、現在群馬県で山形さんが活動する中之条ビエンナーレとの日比アート交流の場の構想を練っているという。
▽比で特別ワークショップ開催
2月の来比のもう一つの目的として、フィリピン女子大のファインアーツ・デザイン学部で特別講師としてワークショップを開催。その傍ら、ビジティング・アーティストとして10日ほど同大の一室で作品制作を行い、学生とアーティストトークをしながら交流した。
山形さん自身が、実際にその土地に行って滞在しながら、そこで何を受け取ってどう視覚化するかを考え制作するアーティスト・イン・レジデンスの活動をしていることから、学生には「住んでいる場所」について考えてもらった。家族の顔や野良犬・猫、貧困をはじめとする身近な社会問題、それらを様々な素材を自由に用いてコラージュで表現。山形さんは「同じモチーフでも違う素材で全然違うものができるのはもちろん、世界を見ている視点がそれぞれで面白かった」と感想を話した。(深田莉映)