「比に来る運命と責任がある」 6月の公演を前に記者会見
和太鼓集団「倭-YAMATO」が6月に予定している初の比公演を前に記者会見
世界を旅する和太鼓集団「倭―YAMATO」が、首都圏とダバオ市で6月に予定している初のフィリピン公演を前に、記者会見を行なった。国際交流基金マニラ日本文化センター(JFM)が主催し、日本と東南アジア諸国(ASEAN)の友好協力50周年を記念したイベントで、比メディアの間でも注目が集まっている。
冒頭の挨拶で、在フィリピン日本国大使館広報文化センターの松田茂浩所長は、YAMATOのコンサート開催を祝福。タガログ語を交えながら今回のイベントは「大使館が日本から本物を招聘してきた、数多くの取り組みの一つ」とした上で「太鼓は聴覚・視覚だけではなく、感じてこそのもの」と力を込めた。
JFMの鈴木勉所長は、今年結成30周年を迎えるYAMATOについて、「日本一の太鼓芸術集団」と称賛し、過去に世界54カ国で公演は4千回、100万人の観客を動員してきた実績に触れた。2021年にJFMは、比への招聘を計画していたが、新型コロナの影響で断念せざるを得なかった。しかし、YAMATOの「エネルギッシュで力強い映像作品を、JFMのページで提供する」など協力関係が続いてきた。YAMATOが表明してきた比への思いに、鈴木所長は心を打たれ、「彼らにはここに来る運命と責任がある」との気持ちを抱いてきたという。
YAMATOの小川正晃代表は「日本ではようやくメンバーもマスクが取れた」とし、10人で太鼓を背後にして記者会見に臨んだ。小川代表によると、新型コロナ禍の3、4年はほとんどコンサートができず、収入も途絶えていた。そんな中で初めて「ユーチューブ上で演奏を行うなど、やれることを探しながら活動してきた」と説明した。「観客の顔が見えなくても、たくさんのコメントに力をもらった。比の国歌を和楽器で演奏した際にも、喜びの声が多かった」と語った。
小川代表を除き、比への訪問は初だというメンバー14人が、桶胴太鼓、宮太鼓、締太鼓、大太鼓を20~30台、それに三味線、篠笛など総重量で約1・2トンの和楽器を持ち込むという。
▽比に向け良い感触
YAMATOは2022年12月から23年1月末まではヨーロッパを「天命」ツアーで回り、2月から2カ月半は全米・カナダを「火の鳥」ツアーで移動してきた。比公演の計画も昨年夏ごろから練ってきたという。小川代表は「仕上がった感があり、いい感じでフィリピンに行けると思う」と好感触を口にした。
一方、比人記者からメンバーの中で「誰が一番人気があるのか」との質問が出ると、全員が苦笑した。それぞれが指で指し合う場面もあったが、最終的に「日本でのコンサート中にがんばりすぎて、両鼻から出血した」という逸話もある男性メンバーに集中した。小川代表は「世界中でツアーを行っていることから、『ミュージシャン』や『アーティスト』と思われがちだけれど、普段は畑を耕したり、セレブ感は全くない」とYAMATOメンバーの庶民的な特徴も強調した。
YAMATOは6月10日に比の政府関係者や招待客向けの特別公演を予定。一般向けには首都圏パラニャーケ市のソレアシアターにおいて11日午後2時と午後7時からの2回。いずれも入場料無料だが、事前のチケット予約が必要だ。13日には日本人の比移住120周年を記念して、ダバオ市のフィリピン日系人会国際学校でのコンサートを予定している。(岡田薫)