次世代の育成に貢献 比体操設備を支援 草の根文化無償
首都圏マニラ市にあるリサール記念スポーツコンプレックスで17日、在比日本国大使館の草の根文化無償資金協力(草の根文化無償)として供与された体操器具一式の引き渡し式が行われた
首都圏マニラ市マラテ地区のリサール記念スポーツコンプレックスの体育館で17日、在フィリピン日本国大使館が支援する草の根文化無償資金協力(草の根文化無償)として供与された体操器具一式の引き渡し式が行われた。
同式典には越川和彦大使や比男子体操のカルロス・ユーロ選手、そして釘宮宗大コーチをはじめ、比体操協会のシンシア・カリオン会長、比スポーツ委員会のウォルター・トーレス委員、比オリンピック委員会のアブラハム・トレンティーノ委員長代理も参列した。
2022年3月に調印された同プロジェクトは比の体操訓練設備・環境の改善を目的として13万3935ドル(約700万ペソ)相当の高品質の日本製体操器具が、比体操協会管轄の同体育館へ供与された。
カリオン会長は日本政府や関係者への感謝を表明し、「支援のおかげで、体操設備を整えることができた。われわれは今、ユーロ選手のような才能ある体操選手を発掘し、育てる環境がある」と述べた。「体操協会設立当初、支援の手を差し伸べる人はいなかった」と明かした一方、「現在は何百人もの選手が世界の舞台を夢見るスポーツとなり、これからも支援を続けたい」とも話した。
また越川大使は「日本から供与された体操器具の中には東京五輪2020で使用されたマットレスも含まれ、世界のステージを少しでも感じてほしい。体操設備を通してより多くの子どもたちがスポーツの楽しさを体験できたら」と語った。
式典では同プロジェクトで提供されたあん馬やつり輪、マットレスなどの多くの体操器具で体育館は埋め尽くされ、途中、比エアロビック体操代表チームの選手らがそれぞれの体操競技を華麗に披露した。先月カタールで開催されたFIGの体操種目別ワールドカップドーハ大会の男子ゆかで金メダルを獲得したユーロ選手も、ゆかの体操演技を披露して会場を盛り上げた。
▽次世代の成長を
釘宮コーチはまにら新聞に「体操競技がお金のかかるスポーツで、裕福な子どもしかできない環境を変えたくて、このプロジェクトを3年かけて実現させた。遠方に住む、小さな子どもでも参加できるこの施設は安価で、いろんな子どもにチャンスが与えられる」と意義を強調した。
さらに記者会見で、ユーロ選手は「釘宮コーチや日本関係者の協力が無くては実現できなかった」と感謝を口にした。同選手と釘宮コーチは「今後は首都圏だけでなく、地方においても体操設備を整えていきたい」と語った。
同プロジェクトの意義を問われ、越川大使は「支援や寄付が次世代の背中を押し、メダル獲得に貢献する。メダルが全てではないが、彼らを前進させるモチベーションとなる。日本としてこのプロジェクトに関われたことに感謝している」と答えた。カリオン会長も、今後の日比連携について「日本体操協会との協議で比日間での選手の相互出張トレーニングプログラムに関して話し合った」と明かした。
東京五輪出場者で、世界大会優勝者でもあるユーロ選手は昨年の第31回東南アジア競技大会で3つ金メダルを獲得しており、今年5月にカンボジアで開催される第32回東南アジア競技大会への出場も予定している。(沼田康平)