「コロナ禍でも交流と創造を」 比日コロナ文学作品集出版
比日からコロナ文学を集めた「パンデミック文学プロジェクト」の出版記念式典が開催
国立ポリテクニック大文芸学部のロメオ・ペニャ学部長が発起人となり、比若手言語教育者研究会が立ち上げた「パンデミック文学プロジェクト」の出版記念式典が4月30日、オンラインで開催された。プロジェクト名と同名の書籍には「コロナ禍克服への希望と強靭(きょうじん)さ」をテーマに、比日両国での一般公募を通じ選ばれたエッセー・小説が12本収録されている。
同プロジェクトは、20年3月から比で「世界で最も厳格」と言われる防疫措置が敷かれる中、「ロックダウンは人々を隔離できても、創造性と国際交流を無くすことはできない」との信念に基づき開始。同年に国際交流基金の協賛を得てオンライン出版。今年、全国文学月間である4月に合わせ書籍出版に漕ぎ着けた。
同書は、地上に舞い降りた神の目線に仮託しコロナ下のバランガイ(最小行政区)に生きる庶民を描いた短編小説「NANG TUMAWA ANG DIYOS」(神が笑うとき)=ジャーナリスト、ベンホ・グチェレスさん作=や、比への交換留学中に経験したロックダウン宣言の夜とその後の混乱を克明につづったエッセー「失われた年」=中学講師、伊藤慎吾さん作=など、スペイン風邪以来100年ぶりともされるパンデミック(世界的流行)発生直後の社会を鮮明に映し出した作品を収録。
ペニャ学部長は「文学は健全で強靭な社会を実現するために必要な手段であり、メディアだ」とし、危機の時代で文学が果たすべき実践的役割を強調した。
書籍は全国の図書館、教育機関などに無料で配布する予定。(竹下友章)