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10月2日のまにら新聞から

経済復興にはまず信頼が大切 コロナ下の経済刺激策

[ 796字|2020.10.2|社会 (society)|新聞論調 ]

 コロナ禍による経済不況から脱出するために「経済刺激策」として政府が資金を投入するのはよくある政策だが、資金投入だけでは不十分だ。支出の規模だけでなく、その質を高める必要がある。資金投入でより多くの効果を引き出すことが重要なのだ。たとえば輸入品ではなく国産品を購入することで、国内生産が拡大すれば雇用が増えるというように。大統領専用ジェット機を購入するなど、もってのほかで、大統領の移動にはコロナ禍で息絶え絶えとなっている国内航空会社を利用する方がよい。マニラ湾ビーチ化事業は批判があるものの、資金が国内で回るので、まだ役立つと考えられる。(もっともドロマイト砂の多くがすでに強い波に洗い流されたようだが)

 経済回復に一番必要なのは、ロブレド副大統領も正しく分析したように、タガログ語の「コンピヤンサ」、つまり人々の「信頼」だ。政府がコロナ抑制に向けた正しい計画を持って実行し、感染者数が確実に減少しているという国民の信頼だ。信頼があれば国民は外出し、従来の活動を取り戻し、経済に再び活気が戻る。しかし、政府はコロナ対策に集中しないばかりか、テロ防止法を施行し、マニラ湾ビーチ化に色気を出し、メディアなどの批判者を迫害することに忙しいようだ。

 グーグル利用者の行動データを分析すると、比を含む東南アジア諸国連合主要6カ国内の人の移動状況は、コロナ禍の前後で、フィリピンが最も移動機会が減少している。これに対して、ベトナムやシンガポール、タイなどはすでにコロナ禍前のレベルをも超えて活発化しているという。アテネオ大の教授は「企業や労働者にいくら財政支援をしても、信頼感が醸成されなければ、企業は融資を受けず、労働者は通勤する気持ちになれず、消費者はレストランやモールに行かない」と分析している。信頼のない景気刺激策は効果を生み出さないのだ。(29日・インクワイアラー、シエリト・ハビト)

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