実効再生産数が1・6まで改善 来週にECQ解除もと大統領府
比大研究グループによると現在の防疫強化地域の実効再生産数が1.6まで改善した
フィリピン大などの専門家グループ「OCTAリサーチ」のギド・ダビッド研究員は5日、首都圏とその近郊4州が3月29日から2週間にわたり防疫措置で最も厳しい防疫強化地域(ECQ)に置かれている中で、1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す「実効再生産数」(R0)が同地域でECQ開始当時の1・9から1・6まで改善したことを明らかにした。
このままECQがさらに1週間延長されれば、同再生産数の下降傾向も続き、来週には同数が1・2まで下がる可能性があると指摘している。
5日の新規感染者数は8355人で過去1週間に記録していた9千〜1万5千人水準からやや下がった。ただし、同研究員は国内の新規感染者は来週も1万1千〜1万2千人の範囲で増え続けると予想。その後、下降傾向となるが、累積感染者数は現在の約80万人から拡大し、4月末までには100万人を超えると予測している。
専門家らは来週以降もECQを継続することが好ましいと見ているが、財界や政府は経済への打撃が大きいとしてECQの再延長回避を望んでいる。ロケ大統領報道官は5日、テレビ局のインタビューに対し「首都圏と近郊4州のECQの再延長はたぶんないだろう」と表明した。報道官は、2週間のECQを実施した後、首都圏と近隣4州を1週間の修正防疫強化地域(MECQ)に指定することを保健省が勧告していることも紹介している。
アビサド予算管理相も「(ECQ下での)現金支給などの支援事業に充てる予算がない」と述べている。
フィリピンで感染者数が急増している理由の一つとして感染検査体制の拡充もある。ワールドメーターによると、フィリピンの100万人当たりの検査数は9万3904人となっており、日本の7万9640人より多くなっている。また100万人当たりの死者数も121人で、日本の同73人よりは高いものの、欧米諸国よりはかなり低い。検査陽性率は5日現在21%と高水準だが、若年層の感染が多く、軽症・無症状の割合が98・5%と高い。
新規感染者数が急増している一方、首都圏の多くの病院が満床で「医療崩壊」が迫っているにもかかわらず、死者数が1桁や2桁でとどまる日も多い。ただし、病院にも行けずに自宅などで新型コロナで死亡した人の集計が遅れている可能性もある。(澤田公伸)