スプートニク比で生産か ロシア製に緊急使用許可
ロシア製ワクチンを比国内で製造するための交渉が最終段階にあることが判明
コロナ感染者が急増し、政府による医療従事者を対象としたワクチン接種プログラムも予定通りに進んでいない中、ロシア製ワクチン「スプートニクV」をフィリピン国内で製造する交渉が最終段階にあることが21日分かった。
食品医薬品庁(FDA)も18日、同ワクチンに対する緊急使用許可を出したばかり。ロシア製ワクチンが年内に国内製造されることになれば、比のワクチン接種事業も伸展する可能性がある。
21日付英字紙トリビューンによると、ロシアのファンド会社、ロシアン・ダイレクト・インベストメント・ファンドの幹部は「(スプートニク製造に向けた)比企業との交渉が最終段階にある。契約が締結されれば4〜5カ月後にはワクチン生産を開始できる」と明言した。また、FDAも18日、ロシアの国立ガマレヤ疫学・微生物学研究所と国防省が共同開発したスプートニクの緊急使用許可を承認。これで国内で使用許可が出たワクチンはファイザー製、アストラゼネカ製、中国シノバック製に次いで4社目となった。
政府のワクチン担当責任者であるガルベス大統領補佐官も18日、比政府が23日にロシア政府関係者と会合を持ち、計300万回分のスプートニクVを調達する契約を結ぶと発表した。ロシア製ワクチンは4〜5月にかけて比に到着する見込みという。
スプートニク・ワクチンについては、国際的承認に必要な臨床試験(治験)の最終段階の実施状況が不透明で、安全性を疑問視する見方も出ていた。
しかし、21日付英字紙マニラブレティンによると、比下院委員会の聴聞会で在比ロシア大使館のエピファノフ大使代理は、英医学誌ランセットにスプートニクの最終段階の治験で91・6%の予防効果が確認されたとの論文が発表されたことを紹介。60歳以上の高齢者に対する治験では効果が91・8%とさらに上昇したという。
この報告にフロリダ・ロベス下院議員(ブラカン州サンホセデルモンテ市選出、与党・国家統一党)は「スプートニクは高齢者にとって最善のワクチンだ」と称賛、比で国民の多くに接種できるとの期待を示した。
比のワクチン接種事業はシノバック製60万回分やアストラゼネカ製52万5600回分の提供を受けて1日から始まったが、16日時点で接種を受けた医療従事者らは21万6794人に留まっている。
比には中国からの新規寄贈分40万回分や比政府購入100万回分、さらにアストラゼネカ製の約98万回分も4月上旬までに到着予定。さらに比政府は最近、インドで生産するノババックス製ワクチン3千万回分を調達する契約も結んでいる。(澤田公伸)