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10月2日のまにら新聞から

政治家に仕える公僕か 行政監察院長の新通達

[ 775字|2020.10.2|社会 (society)|新聞論調 ]

 マルティレス行政監察院長は9月1日の通達で、政府高官らの「資産及び負債、純資産の計算書」(SALN)の公開を、行政監察院ないし高官本人の請求か、裁判所命令に基づく場合にのみ可能とし、いずれも高官本人の承諾書面の提出を義務付けた。つまり、調査を望む国民やメディアなど一般人が計算書を入手することが事実上、不可能になったのだ。同院長は「収入から逸脱した生活」という条項があいまいだとして、公務員に対するライフスタイル・チェックも中止した。

 この決定は、同院長が奉仕すると宣誓した国民のために働いているのか、それとも政治家のためなのか、その忠誠心に疑義を生じさせている。健康保険公社を揺るがせたような汚職が他の政府機関に広がるのではないかとも危惧される。

 マルティレス氏はドゥテルテ大統領の大学時代の同級生で、大統領が最初に最高裁判事に任命した人物でもある。彼は下級審の判事時代にもマルコス元大統領らの汚職裁判で無罪判決を下した。公務員裁判所の判事当時には国軍予算流用事件で財務責任者の罪状を引き下げ、優先開発補助金の流用疑惑ではエンリレ元上院議員らに対する逮捕状発行で反対意見を出している。

 納税者として筆者は同院長の決定を拒否する。同計算書を国民が入手する権利は共和国法で定められており、リナ元上院議員も院長が職権を乱用し、明らかな法律違反を犯したと指摘している。決定は、同計算書が公務員らを中傷する手段として悪用される恐れがあることを理由に挙げているが、政府高官に任命された後、暮らしむきの羽振りが明らかに良くなった場合に、初めて計算書が武器となるにすぎない。今回の決定は、汚職を監視するという行政監察院の使命をないがしろにするだけでなく、ドゥテルテ政権の誠実さにも疑いの目を向けさせるものだ。(30日・スター、アンドリュー・マシガン)

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