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7月10日のまにら新聞から

「武器」を手に入れた治安当局 テロ防止法の論点

[ 746字|2020.7.10|社会 (society)|新聞論調 ]

 2007年制定の「人間の安全保障法」が廃止され、議論を巻き起こしたテロ防止法がついに成立した。早速、反対する法学者らは最高裁に対し同法の施行差し止めを求め提訴。政府は裁判所の決定に従うとしているが、治安当局は施行後、すぐに適用しようとしているようだ。

 新法では、不当逮捕した治安当局者に対する拘留期間を削減し、1日当たり50万ペソの罰金が廃止された。同法で最も物議をかもしているのが、誰をテロリストとするかを決めるテロ防止委員会の権限や、テロ容疑者を令状なしで逮捕し、24日までの拘留延長を可能にする条項だ。同法の支持者は、治安当局がそのために控訴裁判所から正式な認可を得るほか、逮捕を人権委員会へ告知することなどが必要になるとしており、米英豪などではさらに長い拘留期間を定めた同様の法律があるとも主張する。

 同法はまた、資金洗浄防止委員会が、口座情報不開示原則を適用せずにテロリストの疑いのある人物の銀行口座を取り調べることも認めている。これは、パリに拠点を置く金融活動作業部会が比に対し、テロリストの資金調達を防止する法律を成立させなければ、年内に比を資金洗浄行為の監視が必要な「グレーリスト」に指定すると警告していたことも背景にある。

 しかし同法に反対する人々は、拘留などに関する条項が違憲だと主張。同法が濫用され、政敵の制圧や人権抑圧に使われることを危惧している。これまでの現政権の違法薬物戦争などを見れば、根拠のない懸念とも言えまい。

 治安当局は、国会と政権に「武器」を求め、手に入れたが、当局は市民の信頼をまず得ることが先決だ。他の「武器」同様、同法を国家と民主主義を守るために、自制心を持って効果的に使用できるということを示さなければならない。(6日・スター)

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