「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

マニラ
34度-25度
両替レート
1万円=P3,680
$100=P5595

2月28日のまにら新聞から

国民の行く末を左右する力 巨大放送局の免許更新問題

[ 779字|2020.2.28|社会 (society)|新聞論調 ]

 「ABS—CBN(チャンネル2)は国内最大の政党だ」と私が言ったところ、放送局の幹部が私のテレビ出演を禁じた。報道の自由は民主主義社会では基本。報道機関は、さまざまな声をすくい上げるプラットフォームを提供し、公共の見張り番であると同時に、教育者やエンタテイナーであり、現代史の記録者なのだ。また、表現の自由も基本的人権の一つ。自分の意見や考えをさまざまな形式で発信し、情報交換する権利を持つ。国家や個人による検閲や表現への抑圧があってはならない。

 この放送局は上院議員や大統領の候補者を選挙で勝たせることができる。少なくともドゥテルテ大統領が登場するまでは。報道ニュースや政治広告などを通じ、選挙当日になると彼らが宣伝した候補者が有権者の頭に浮かんでくる。

 チャンネル2の社主であるロペス家は1965年大統領選で、マルコスと組む副大統領候補に一族のフェルナンド・ロペスを送り込んだ。当主のユーへニオ・ロペスは資金とメディアと組織票を使って65年のマルコス側の勝利と、69年選挙での再選を演出した。その後、コリー・アキノや息子のベニグノの登場だけでなく、エストラダやアロヨ大統領らの失脚でも、重要な役割を果たした。

 放送免許自体はベニグノ・アキノ政権の国会で更新させることが出来たが、ロペス家が更新に付随する条件が気に入らず放置した経緯がある。大企業はテレビコマーシャルに毎年、40億〜200億ペソを支出している。首都圏ではチャンネル7が視聴率トップだが、地方はチャンネル2が牛耳っている。衛星放送やラジオ、ネットメディアにも進出、番組で頻繁に露出することで議員の座も確保できる仕組みだ。放送免許が失効すれば1万1千人の従業員がどうなるのかとの議論もあるが、1億1千万人の国民の行く末も重要なのだ。(25日・マニラタイムズ、ルールデス・ティキア)

社会 (society)