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6月1日のまにら新聞から

法手続き軽視は危険 犯罪者処刑団

[ 721字|2015.6.1|社会 (society)|新聞論調 ]

 フィリピンにはハリウッド映画「ダーティーハリー」のようなタイプを好む人がいる。法的手続きを無視する傾向の人物が政界の要職に就いている。ミンダナオ地方ダバオ市に「王国」を作り上げたロドリゴ・ドゥテルテ市長は、犯罪組織構成員らを標的した「処刑団」への関与を認めた。しかし、謝罪する様子はない。

 ニューヨークに本部を置く人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」によると、ダバオ市の処刑団は1990年代だけで約千件の殺人事件にかかわっているという。

 また2009年に起きた事件では、ドゥテルテ市長の関与が指摘されている。人権団体の訴えに対し市長は「私を告発してみろ。わが市は世界屈指の安全な街だ」と反論した。

 ダバオ市は犯罪組織にとってだけでなく、左派系活動家や貧困層にとっても安全・安心な街ではない。人権団体の調査によると、処刑団は窃盗など軽犯罪も積極的に取り締まっているという。しかし、ストリートチルドレンなどが、そうした犯罪に手を染める問題の根源は貧困にある。

 犯罪を取り締まる法執行力が低い上に、裁判に途方もない時間を要するこの国では、司法軽視の政策が支持されてしまいがちだ。ドゥテルテ市長の街では、どんな軽犯罪も警察は見逃さない。これが長期間続いている「市長人気」の理由だ。

 しかし、司法の軽視は法執行能力の乱用と悪用につながる。法的手続きを無視した超法規的殺人で犯罪を取り締まっても、自由な社会が築かれることはない。

 犯罪は、ドゥテルテ市長が主張するように、犯人を殺害することで解決することはできない。超法規的殺人を支持する人たちは、自分の愛する人がえん罪で処刑された時にきっと後悔するだろう。(28日・スター)

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