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12月28日のまにら新聞から

日比往来緩和「交渉続ける」 領事サービス拡充、大使館・公邸開放も

[ 1842字|2020.12.28|政治 ]
インタビューに答える越川和彦大使=22日午前、日本大使館で石山永一郎撮影

 11月末に着任した越川和彦駐フィリピン日本大使に比の第一印象や抱負を聞いた。在ニューヨーク総領事館時代に多数の邦人も犠牲になった2001年9月11日の米同時多発テロを目の当たりにした越川新大使は「あの事件を境に外務省の領事業務への意識が大きく変わった」と明言。比政府への新型コロナ禍での商用ビザの規制緩和、領事サービス拡充などを目指したいとの考えを明らかにした。(聞き手は編集長・石山永一郎)

 ─比の第一印象は。

 「首都圏はダイナミックな街と感じた。人が多い。特に日本と比べると若い人が目立つ。一方、週末にマラカニアンやイントラムロスなどに出かけてみたが、マカティとは違って貧困が目立つ場所もやはりあるなと感じた。フィリピン語の研修を受けて来たが、スペイン大使をしていたので、スペイン語の数詞が通じ、同じ単語も多いことをうれしく思っている」

 ─大統領とは会ったか。

 「14日の信任状捧呈式でお会いし『日本とは兄弟より近しい関係だ』と言われた。菅総理との電話会談でも大統領は同じ発言をした。日本は戦争で比に多大な迷惑をかけたが、今は日本を許し、非常に親日的な国となってくれている。比は日本にとって南の隣国。重要な位置にある。今後も人材の交流などを一層深めていきたい」

 ─これまでの外交官としての仕事で最も苦労したことは。

 「2001年8月にニューヨーク総領事館に広報文化センター長として赴任、直後に同時多発テロが起きた。テロ直後、多数の邦人が避難先を探して総領事館にも押し寄せた。しかし、総領事館の入っていたビルが部外者の立ち入りを禁じたため、中に入れることはできなかった。このため、泊まれるホテルのリストを作ってビルの入り口で邦人に配った。しかし、その様子を写真に撮った日系メディアに『総領事館が邦人追い返す』と書かれた。その記事自体は不当ながら、背景には在留邦人の間で総領事館の評判がもともと悪かったという問題もあった」

 「その後も、テロで犠牲になった邦人の確認に追われた。世界中から約2千件の邦人の安否についての照会を受けた。遺族への対応、メディアへの対応でとにかく大変な日々が続いた。その時以来、私だけでなく外務省全体が領事業務の重要さを改めて認識した。以来、在外公館における領事業務はかなり改善されたはずだと思っている」

 ─現在の在比邦人の最大の悩みは日本との往来ができないこと。外交交渉で商用ビザなどの規制緩和を実現させてほしいとの声が強い。

 「承知している。9g(企業駐在員らへの一般査証)での再入国は東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で比だけが認めていなかった。日本は認めてきた。そこでロクシン外務相、ドミンゲス財務相、メディアルディア官房長官ら閣僚への表敬の際に比だけが認めていないことが分かる表を作って渡し、検討をお願いした。その効果かどうかは分からないが、17日に同日以降出国した9g所持者に対する再入国規制が緩和された。ただ、まだ条件が多い。今後も商用で赴任する新規入国者への緩和などさらなる交渉を続けるつもりだ」

 ─日本との往来が簡単にできなくなったことに伴い領事サービスの拡充を求める声もある。

 「ネットで日本の役所とつないでできるサービスはたくさんあると思う。たとえば運転免許証の更新。本人認証を確実にできるようになれば、日本に帰らなくても免許の更新はできるはずだ。印鑑の廃止などデジタル化を進める菅内閣の方針とも一致している」

 「ニューヨークに赴任したころには、外務省、在外公館へのさまざまな批判が噴出していた時期でもあった。批判の中に、各国にいる大使はシャンデリア付きの豪邸でぜいたくに暮らしているといった批判もあった。セキュリティの問題さえクリアできれば、大使館、公邸を在留邦人の皆さまに開放したいと思っている。大使館、公邸でやりたいイベントなどがあれば活用頂きたい。大使館も公邸も邦人の皆さまが敷居を感じない場所にしていきたい」

 こしかわ・かずひこ 1956年生まれ。千葉県出身。一橋大卒。80年に外務省入省。2001〜04年、在ニューヨーク総領事館領事、08〜11年に駐アンゴラ大使。国際協力局長、大臣官房長を経て14〜16年に駐スペイン大使。その後、国際協力機構(JICA)副理事長などを経て20年11月から現職。趣味はゴルフ、園芸、乗馬など。1男3女の父で比では夫人と2人暮らし。

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