台風ヨランダ(30号)
タクロバン市長、被災後48時間の人命救助で「政府の支援皆無だった」と非難
台風ヨランダ(30号)被害で少なくとも約2300人が死亡したビサヤ地方レイテ州タクロバン市のロムアルデス市長は9日、国家災害対策法に関する上・下両院監督委員会の聴聞会に出席し、台風直撃後48時間の政府による人命救助支援が皆無だったと述べ、アキノ政権の対応を非難した。
ロムアルデス市長は「市民はみな、横たわる多数の遺体のとなりで、がれきの中から聞こえてくる、助けられたはずの人々の声を聞きながら、市内に入った国軍のトラックや航空機が通りすぎるのを見て、いら立ちを募らせていた。政府による人命救助支援はなかった」と主張した。
1カ月以上が経過した現在も、市内では毎日60〜80体の遺体が見つかっていると説明。遺体捜索のために、首都圏から重機を取り寄せたとした上で「被災当初から遺体の収容で追加支援を要請したが、支援は届かず、(死者1万人と発言した)警察本部長まで解任になった」と、涙ながらに訴えた。
同市長はまた、ロハス内務自治長官に、夜間外出禁止令を敷くための市条例を用意するなど、市の対応をすべて合法化する手続きを踏むよう強いられたと証言。「建物も職員も、自治体そのものが破壊され機能を失っている状態では、極めて困難だ」と理不尽さに怒りを表した。
さらに、市長がマルコス上院議員のいとこであることに触れ、「ロハス長官に『大統領はアキノ家、あなたは(マルコス一家と血縁の)ロムアルデス家だということを忘れるな』と言われた。レイテに対する政府の支援には明らかにためらいがあった」と述べ、政府が被災地支援を政治化したと糾弾した。
これに対し、ロハス長官は10日、「市長は自身も被災しトラウマを負っているのかもしれないが、事実を曲げて話を作るべきではない」と、支援の遅れや政治化を否定した。
大統領府と同長官は、①台風が直撃する前日の7日からロハス、ソリマン社会福祉開発、ガスミン国防各長官がタクロバン市入りし、災害に準備②被災から24時間以内に国軍がタクロバン空港のがれきを撤去③計3375人の兵士を派遣④重機やトラックの投入、食料配給で各省庁が連携して支援に尽力⑤11月10日にはアキノ大統領が現地入り││などを挙げ、政府が必要な支援を段階的に実施してきたと強調した。
その上でロハス長官は、「アキノ家とマルコス家という異なる政治的背景があるだけに、いかなる誤解も避けるため、言動に慎重にならなければならないという意味で話した。市長の発言こそ、最悪の政治化だ。被災当時ビーチリゾートにおり、住民の避難徹底に失敗した責任から逃れるため自分を守っているのだろう」と述べ、聴聞会は泥仕合の様相を呈した。(大矢南)