正義の実現を 先住民虐殺事件
現代国家でこんな事件が起きて良いのだろうか。ミンダナオ地方ブキドノン州で8月、先住民の一家5人が虐殺された。また、1日には南スリガオ州で先住民のための学校を運営する責任者とその知人の計3人が惨殺された。目撃者によると、犯人は政府系の民兵組織で、被害者らは比共産党の軍事組織、新人民軍を支援している容疑をかけられたという。国軍は同地方の先住民に対する攻撃に関与していないと否定するが、関係団体によると、現地で企業が事業経営するために先住民たちを追い出しているとの疑いが強まっているという。
この事件に関しては逮捕者が出ておらず、その動機も不明だ。分かっていることは何人もの住民が虐殺され、その犯人が捕まっておらず、今後も同様な殺人に手を染める可能性があるということだ。このような暴力が再発しないようにするには、犯人を捕まえ、裁き、正義を実現することが大切である。もしそうでなければ、さらに犯罪が増え、反体制運動が強まり、貧困がさらに拡大してしまう。
アキノ政権は先住民たちを祖先伝来の土地から追い出すような政策は取っていないと否定するが、実際に多くの先住民が土地を追われ、一時避難施設に身を寄せている。これではまるで、マルコス独裁政権がかつて行った共産武装勢力対策の一つ、「戦略村」の再現ではないか。
また、国軍が左派系の運動家を対象にした政治的殺人に関与しているのではないかという疑いが国連からも指摘されている。国軍はその指摘や民兵への支援をいずれも否定しているが、先住民たちが今後も殺される限り、国軍は容疑者として疑いをかけられ続けるだろう。アキノ政権はこのような疑いを晴らすためにも、犯人を捕まえ、訴追し正義を実現すべきだ。(11日・スター)