「平和の尊さ今こそ心に」 戦後79周年 カリラヤで慰霊祭開催
ラグナ州カリラヤ日本人戦没者慰霊園で慰霊祭。遠藤大使は、遺骨収集問題や残留日系人問題などへの取り組みへの決意を表明
ルソン地方ラグナ州カビニ町カリラヤの日本人戦没者慰霊園で15日、日本の終戦記念日に合わせ慰霊祭が執り行われた。慰霊園には遠藤和也駐フィリピン日本国大使、マニラ日本人会の岡本和典会長、比日本商工会議所の石川治孝会頭、比日系人会連合会のイネス・山ノ内・マリャリ会長ら、日本人・日系人団体の代表ら約200人が参加。また今回は、比訪問中の塩村あやか参議院議員(立憲民主党)も参加した。
岡本会長は在留邦人を代表して読み上げた追悼の辞で、「先の大戦では50万人以上の将兵、2万人の民間人が祖国日本、家族を思いながら無念の死を遂げ、また、それに倍する110万人の比人が犠牲になった」と振り返り、全ての戦没者の御霊(みたま)に哀悼の誠を捧げた。
初の慰霊祭参列となった遠藤大使はスピーチで、今もなお残されている日本人将兵の遺骨問題に言及。「多くのご遺骨のことも決して忘れない。一日も早くふるさとにお迎えできるよう、国の責務として全力を尽くす」と決意を示した。
さらにロシアによるウクライナ侵攻、パレスチナ・ガザ地区とイスラエルとの戦闘に触れた上で、日本を取り巻く安全保障環境を「戦後最も厳しく、複雑な状況」と指摘。「このような時だからこそ、改めて戦争の悲惨さと平和の尊さを深く心に刻み、その記憶を風化させることなく次の世代に継承していくことが私たちの責任だ」と述べた。
式典にはマルコス大統領もメッセージを寄せ、花田貴裕総領事が代読。「比国と比国民は、日本国民と共に、第二次世界大戦の悲劇で失われた無辜の命に追悼の意を表す」と述べた上で、「日本は約70年にわたる確固たるパートナー。両国の戦略的パートナーシップは、両国民の繁栄だけでなく、地域の平和、安定、進歩のために幅広い分野での協力を導く」とし、終戦の日に両国の協力を進める決意を改めて表明した。
▽「まだできることある」
先の大戦によって生じた比日両国にまたがる問題としては、戦中・戦後の混乱、渦巻く反日感情のために出自を隠し、無国籍のままとなっている残留日系人問題がなお残っている。前日に大使公邸で日系人団体の代表らと意見交換をした遠藤大使は、記者団に対し、同問題について「残留日系人の方々は、国籍、生誕等を含めて記録が残っていないことで様々な課題がある。日本政府としても、残された時間は極めて限られている中で、様々な乗り越えなければいけない課題にしっかり取り組みたい」と決意を語った。
今回初めて開催された懇親会でのスピーチで塩村あやか議員は、「私の選挙区は東京だが、被爆二世でもあり、8月は特別な思いで過ごしている。また大伯父が(ケソン州)インファンタで戦死しており、まだその遺骨が帰ってきていない」と自身も遺骨問題の当事者であることに言及。
また、去年12月の残留日系人2人の一時帰国事業をNPOフィリピン日系人リーガルサポートセンター(PLNSC)の猪俣典弘代表と共に実現させた同議員は、「私も含め、大使館、PLNSCのどれか一つ欠けてもこれは実現できなかった。政治家としても日本人としてもまだまだできることがあると感じた」と手応えを語った。(竹下友章)