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1月24日のまにら新聞から

大統領「ICC捜査に協力しない」 ドゥテルテ氏逮捕秒読み情報で

[ 1308字|2024.1.24|社会 (society) ]

「ドゥテルテ氏逮捕秒読み」情報に対し、大統領「捜査員の入国は許すが、捜査への協力はしない」

 前政権期に実施された麻薬撲滅政策(麻薬戦争)に伴う超法規的殺害への国際刑事裁判所(ICC)の捜査について、マルコス大統領は23日、「ICC捜査は比主権の侵害となるため、協力しない」と改めて宣言した。これに先立って21日、アントニオ・トリリャネス元上院議員は「ICC捜査員が比国内で十分な情報を集めることに成功しており、ドゥテルテ氏に逮捕状が発付されるまで秒読み段階に入っている」と報告。昨年11月の訪米を機に、前政権で脱退したICCへの「復帰を検討している」と発言するなど態度に明らかな変化があった大統領の発言に注目が集まっていた。比各メディアが報じた。

 大統領は、捜査協力に関しては主権侵害として否定する一方、捜査員の入国自体に関しては「一般人としてフィリピンを訪れることは可能だ」との見解を示し、訪問外国人として可能な範囲での捜査活動を黙認する姿勢も示した。

 ドゥテルテ前大統領を含む超法規的殺害の「容疑者」を捜査するためICC捜査員が入国しているとの報告について、司法省は「わが国にICCが来ているという情報については、何の連絡も確認もない」と声明で発表。「外国団体が比国内で公式な活動を行うのに際し、外務省が行う通知も出ていない」とした。

 ICC捜査員が入国したという情報や、公式には入国していないという政府発表が交錯する中、苛立ちの声を上げたのが、ドゥテルテ前大統領から国家警察長官に抜てきされて麻薬戦争の指揮をとったロナンド・デラロサ上院議員だ。ICC捜査の重要容疑者の1人として名が挙がる同議員は22日の会見で、「政府には『男らしく』本当のことを言ってほしい」と発言。「私が捜査を受け収監されてほしいと思っているのなら、直接言ってほしい。私の知らないところで、私に言っているのとは別のことをいうのはやめてほしい」と心情を吐露した。

 さらに、2週間前に直接「捜査員を入国させない」と約束したという大統領には「あなたがリーダーなのだから、本当は何をしたいのか教えてほしい」と訴えた。大統領がICC復帰に対する以前の立場を変えたことについては、「大統領に異を唱えていると思われることは言えない」とし、発言を控えつつ反対の立場をにじませた。

 ICCの捜査については「警察からは確認が取れなかった」としつつ「捜査員がボラカイ島に滞在したといううわさは聞いている」とし、「部分的な捜査を行ったと思っている」との認識を示した。その上で、「かりにICCが逮捕状を発付しても、それを執行するかどうかは比政府次第だ」と強調した。

 前政権で大統領報道官を務めたハリー・ロケ弁護士は21日、「比は2018年にICC脱退を表明し、その1年後に正式に脱退した。ICCの予備調査は2021年に開始されており、比に対する司法管轄権はない」と主張した。

 ICC設置条約であるローマ規程の127条2項には「脱退後も締約国時の義務を免除されない」と記されている。この条文に従い、プーチン大統領に逮捕状を発付したことでも知られるICCのカーン主任検事は、ドゥテルテ氏らに対する捜査手続きを進めている。(竹下友章)

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