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11月28日のまにら新聞から

ICC復帰検討を歓迎 麻薬撲滅戦争の犠牲者遺族ら

[ 803字|2023.11.28|社会 (society) ]

マルコス大統領が比の国際刑事裁判所への再加盟を検討すると発言したことを麻薬撲滅戦争の犠牲者遺族らが歓迎

麻薬戦争で犠牲になった夫や子どもたちの写真を掲げながら遺族支援団体「AJカリンガ」が開いたミサ集会に参加した遺族ら=10月31日、ケソン市のバンタヨッグ・ナン・マガ・バヤ二公園で澤田公伸撮影

 ドゥテルテ前政権下で推し進められた麻薬撲滅戦争で警察の捜査や超法規的殺害などで殺された麻薬密売容疑者らの遺族団体は25日、麻薬戦争におけるドゥテルテ前大統領らの役割に関する捜査を開始している国際刑事裁判所(ICC)について、マルコス大統領が「再加盟を検討する」と発言したことについて歓迎するコメントを発表した。ドゥテルテ前政権下の2018年に比は同裁判所から脱退している。26日付英字紙インクワイアラーが報じた。

 コメントを発表したのは麻薬戦争における超法規的殺害の犠牲者の遺族たちの団体「ライズ・アップ・フォー・ライフ・アンド・フォー・ライツ」。代理人となっている弁護士で下院議員も務めたネリ・コルメナレス氏とマリアクリスティーナ・コンティ氏は、政府が国際刑事裁判所に再加盟すればICCの訴追手続きに対して有力な情報や関係者からの協力が得られるとして歓迎した。

 国家警察や司法省によると、麻薬撲滅戦争では警察発表で6千人を超える容疑者らが殺害されており、そのうち適切な捜査手続きが行われたのは50件ほどにすぎない。しかも捜査手続きから被疑者の訴追に至ったのは3件という。

 ただし、マルコス大統領はICCへの再加盟を政府として検討するとしたものの、比国内における麻薬戦争に関するICCの捜査権や裁判権は認めないとしており、前大統領に関する比国内でのICC捜査がすぐに認められる状況にはないようだ。

 さらに、前政権下に国家警察長官を務め麻薬戦争を率いた後、上院議員に転身したデラロサ上院議員は27日、声明を発表し、たとえマルコス大統領がICCへの再加盟を決定した場合でも、最終的に決定を確定させるためには上院の3分の2以上の賛成票を得る批准手続きが必要だと強調した。同氏を含めたドゥテルテ派の議員数も多い上院議会が、最後に再加盟への障壁として立ちはだかる意向を示したとみられる。(澤田公伸)

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