「NTF―ELCACの廃止」求める 国連特別報告者が勧告 比の環境・人権の実態調査終え
今月6日からフィリピンにおける気候変動の影響や土地・居住地を追われる先住民の事例に関する実地調査を行っていた国連特別報告者が帰国した
今月6日からフィリピンにおける気候変動の影響や土地・居住地を追われる先住民らの事例に関する実地調査を行っていた国連特別報告者が15日に帰国した。人権の促進・保護に関する特別報告者イアン・フライ氏は最終日に、記者会見を開き、「共産主義勢力との武力紛争を終わらせる国家タスクフォース」(NTF―ELCAC)とテロ防止法の廃止を求めた。双方の廃止を明確に勧告した国連特別報告者はフライ氏が初めて。
ネットメディアのABS—CBNなど各紙によると、イアン氏は多くのNGOや先住民団体の代表らと面会。「彼らがどのように扱われてきたか、その恐ろしい話を聞いた。NTF―ELCACが本来の任務を超えた活動を行っていることは明らかで、私的な金銭的利益がその裏にあるように見える」と述べた。また「拷問や失踪、超法規的殺害との関連でも、その名前が聞かれている。これはまったく受け入れられない。この政府の軍事機関は管理能力を失い、合理的と考えられる範囲を超えようとしているようだ」との危機感も口にした。
違法な家宅捜索や教会団体への資金凍結などにも言及したフライ氏は、「国軍によって地域社会で引き起こされた被害に対処する」真実と和解のためのプロセスの確立を提案。「環境保護や人権擁護を訴える人々への迫害で、大きな被害を受けた人々がいることは明確であり、軍の行動を検証するプロセスが必要不可欠」とも語った。
フライ氏によると、比は環境活動家の扱いに関して、「ブラジルに次いで世界最悪の国」との認識を示した。「これは深刻な問題であり、このままではフィリピンの国際的な評判にも深刻な影響が加わるだろう」ともし、「その評判は気候変動に関する交渉の成果にも影響する」と強調した。
▽勧告に「称賛」の声も
人権団体カラパタンは16日の声明で、フライ氏による「NTF―ELCACとテロ防止法の廃止を求める勧告を「称賛する」とし、フライ氏がマルコス現政権下でも継続する組織的な赤タグ付けの事実を指摘したことに歓迎を示した。また、クリスティーナ・パラバイ事務局長は「フライ氏の比訪問は極めて重要な時期に行われた。NTF―ELCACの不吉な動きとテロ防止法が活動家らを危険な状況に置いてきた実態を明らかにするものだ」と言明した。
現時点で、国軍やNTF―ELCACは、フライ氏の勧告に対する反応を表してはいない。環境保護団体「カリカサン」の調査によると、現政権下では少なくとも35人の環境保護活動家が失踪、または拉致、殺害されている。(岡田薫)