「期待通りの成果」 14カ国空軍種共同訓練
14カ国空軍種の合同空輸訓練が比で初めて実施。孤立地域への物資投下訓練などを行った
パンパンガ州のクラーク空軍基地で17日、米国が主導し隔年で実施する空軍種共同空輸訓練「パシフィック・エアリフト・ラリー」の実地演習が公開された。今週を通して比各地で実施されている今年の訓練では、初めて比国軍が共同主催者となった。今回の訓練には、比米に加え、日本、カナダ、インドネシア、マレーシア、ブルネイ、シンガポール、東ティモール、スリランカ、バングラデシュ、モルディブ、モンゴル、ネパールの14カ国から計779人が参加。目的に「インド太平洋地域をより安全に保つため相互運用性を強化する」ことが掲げられ、中国の海洋進出が強まるなか広範な「同志国」間の連帯を示した。
航空自衛隊からは、愛知県小牧基地の航空支援集団第1輸送航空隊員21人が参加。空自にとって、初となる比での多国間共同の救援物資投下訓練も行った。訓練には比日米、マレーシア、インドネシアが戦術輸送機C130計6機を投入した。
今回の訓練では、14日に行った計画・調整を踏まえ、15日、16日にヌエバエシハ州のマグサイサイ国軍基地で「火山の噴火によって基地が孤立した」という想定シナリオの下、救援物資投下訓練、隊員パラシュート降下訓練を実施。17日には、パンパンガ州のクラーク空軍基地でC130への負傷者収容訓練が、近くのホテルでは災害救援に関する14カ国合同の机上演習が実施された。
▽離島救援にも有用
物資投下訓練について空自C130パイロットの大塚正翔(おおつか・まさと)一尉は、まにら新聞に対し「日本では実際の災害時に実行されたことはないが、災害時に航空機が着陸できない狭い場所や、港が被害を受けて船が着岸できなくなった離島に救援物資を届けるために有効な手段。学校のグラウンドくらいのスペースがあれば物資をピンポイントで届けられる」と説明。日本、比、米国、マレーシア、インドネシアの5カ国で実施された投下訓練について「事前の入念な調整のお陰で、期待通りの成果が得られた」と手応えを語った。
空自は米軍によるミクロネシアの離島への人道支援物資投下作戦「クリスマス・ドロップ」にも15年から参加している。
米軍横田基地に所属するC130パイロットのティモシー・キム大尉はまにら新聞に対し、「最近比が台風に襲われたことは知っている。物資のパラシュート投下は、本土から隔絶された離島や岩礁への支援に適しており、そうした状況で100%役に立つ」と述べた。
また、14カ国共同机上演習に参加した大塚一尉は、同演習について「比では2013年にスーパー台風ヨランダが襲来し多大な犠牲を出しているが、今回の机上演習のシナリオは台風襲来後の共同人道支援・災害救援活動だった」と説明。「今回の演習で各国の考え方を理解できたため、この経験は次の災害が発生し多国間で人道支援・災害救援に当たる際に、よりスムーズに調整するために役立てられる」と訓練の効果を説明した。
空自は2019年6月に比空軍と相互協力の合意を結んでおり、21年に初めて2国間の人道支援に関する共同訓練を比で実施。22年には初めて比日双方の輸送機が投入されたほか、同年末には交流目的として空自のF15が日本の戦闘機として戦後初めて比に飛来している。(竹下友章)