日本含む各国が犯行非難 ジャーナリスト殺害事件
ジャーナリストのペルシバル・マバサさん殺害事件で、日本をはじめ各国が犯行を非難
首都圏ラスピニャス市サンタセシリアビレッジで3日午後8時半ごろ、ジャーナリストのペルシバル・マバサさんが銃撃されて死亡した事件で、越川和彦駐フィリピン日本国大使や、欧州連合など20数カ国がマバサさんへの哀悼や、犯行への非難を発表している。国内外から容疑者逮捕を求める声が強まっており、アバロス内務自治相は容疑者逮捕に繋がる情報に当初50万ペソの報奨金を出すことを約束していたが、警察を通じてその額を150万ペソに引き上げ、容疑者の写真も公開した。
マバサさんは車で同ビレッジ内にあるラジオ局に向かう途中、後方から来たオートバイに乗った2人組に銃撃されて即死、車は最終的にリゾートのゲートにぶつかった。「ペルシー・ラピッド」という愛称で親しまれていたマバサさんは、ドゥテルテ、マルコス両政権を批判する発言でも知られるラジオ番組「ラピッド・ファイヤー」のキャスターを週に5日勤めていた。
在フィリピン米国大使館は5日、「人々が求めるものを享受できる未来を作り上げていくうえで、表現の自由は何ものにも代え難い」とし、国家警察と国家捜査局が徹底した事件調査を命じたことを「歓迎する」声明を発表した。米国に先駆けて、カナダやオランダなども同様の声明を発していた。
越川大使は6日のツイッター投稿で、マバサさん殺害に「深刻な懸念」を表明し「家族に対する心からの哀悼の意」を伝えた。英字紙ブレティンの記者である弟のロイ・マバサさんは同投稿に「日本大使館の応援に、家族を代表して感謝を伝える」と返信している。
ロイさんは同日のテレビ局ANCによるインタビューの中で「兄が統計の新たな数字の一つになることだけは望んでいない。私たちは15年前からジャーナリスト殺害を止めるよう提唱する活動を続けてきた。その結果私たち自身が犠牲者となった。自身の身が安全だとはもう感じられない。政府が現状に対処しなければ変わらない」と訴えかけた。
一方、メディアの安全に関する大統領タスクフォースは4日の声明の中で「まだ時期尚早」と認めながらも「殺害動機は仕事に絡んだもの」との見立てを発表し、犯行を強く非難した。ニューヨークが拠点のジャーナリスト保護委員会(CPJ)は同日、マルコス大統領によるコメントの遅れを指摘し、CPJの「世界不処罰指数」で、比は7番目にジャーナリスト殺害の容疑者が放免されたままの国である事実を指摘した。
マバサさんはマルコス政権下で仕事に絡んで犠牲となった2人目のジャーナリストとされる。9月18日には、東ネグロス州マビナイ町で地元ラジオ局キャスターのレイ・ブランコさんが、訪問先の住人にナイフで刺され亡くなっていた。
▽赤タグ付けなどを非難
フィリピン大の学生委員会は6日の声明で、マバサさんが果敢に政権批判を行っていた事実を明らかにした。生前最後の2つの放送は、共産主義勢力との紛争を終わらせる国家タスクフォース(NTF―ELCAC)元広報官で「赤タグ付け」で知られるロレイン・バドイ氏、そして官房長官の職を最近辞したマルコス大統領の右腕、ビック・ロドリゲス弁護士を批判する内容だった。
人権団体カラパタンによると、マバサさんは最近、フィリピン共産党のテロリスト指定を求めた司法省の申し立てをマニラ地裁が棄却した件についても語っていた。「彼の立ち位置は明確で、赤タグ付けや汚職、戒厳令時代の歴史的事実の歪曲、国の誤った政策などに自身の意見を述べていた」という。カラパタンはまた、最近任命された人権委員会のリチャード・ラトク委員長に、比の人権状況を直視し、同委員会の義務に則った公正な調査を行うよう求めた。(岡田薫)