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10月2日のまにら新聞から

災害の守り手を守れ 母なるシエラマドレ山脈

[ 752字|2022.10.2|社会 (society)|新聞論調 ]

 数百万年前、偉大な戦士の父ルソン、愛情深い母シエラと2人の息子、イロコとタガロの家族がいた。家族の唯一の悩みは、かつてシエラに求愛した風の支配者、バグソン・ハギンだった。彼はシエラがルソンを選んだことに怒り狂い、木を根こそぎなぎ倒し、海を荒れ狂わせ、シエラの大切なものすべてを破壊すると誓っていた。

 ある日、ハギンの攻撃を受けたルソンは、シエラに「息子たちを必ず守ること」を約束させ、息絶えた。シエラは海岸線に身を横たえ、腕の中に息子2人を抱きしめて守り切った。その後、シエラの体は森となり、豊かな緑は固有種を含む多くの生命の拠り所となった。北はカガヤン州から南はケソン州まで、680キロメートルにもわたる国内最大のシエラマドレ山脈である。

 台風16号の警報が鳴り響く中、シエラマドレ山脈は再びルソン島を守っている。この山脈は神話に登場する姿の通り、ルソン島の大半を自然災害から守っている。手つかずである限り、その適切な形と大きさをもって、太平洋からの暴風雨に対抗でき、大災害を食い止める防波堤となるのだ。

 しかし、スペイン統治時代以降、採石や違法伐採、開発により森林面積は90%が失われた。また、ルソン島の洪水問題の解決策とうたわれるカリワダムは、先住民の土地を奪い、森林を切り開き、物資運搬用の道路や橋も必要とする。その建設過程にすでに洪水悪化の懸念があるのだ。

 新しく植えられた苗木は、山を支えるに至るまで数十年はかかり、植林だけでは不十分だ。ルソン島の背骨とも言えるシエラマドレ山脈を守るための私たちの行動こそ、その背骨の一部として重要だと認識すべきではないだろうか。特に、政府が山脈の偉大さに気付いていない時こそ。(9月28日・インクワイアラー、アイネス・ポンセデレオン)

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