「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

マニラ
33度-25度
両替レート
1万円=P3,780
$100=P5880

7月23日のまにら新聞から

「日本人の誇り強く感じる」 叙勲授与式でマリャリ氏

[ 1629字|2022.7.23|社会 (society) ]

ミンダナオ国際大学学長のイネス・マリャリ氏に対する旭日中綬章授与式

メダルを授与されるイネス・マリャリ博士(中央)。右は石川義久ダバオ総領事、左は三橋里衣副領事=太田勝久撮影

 令和3年(2021年)秋の叙勲で旭日中綬章を授与されたイネス・ヤマノウチ・マリャリ博士(51)の叙勲授与式が16日、ミンダナオ島ダバオ市内のホテルで開催された。イネス氏は、現ミンダナオ国際大学学長、現フィリピン日系人連合会会長。功労の概要は「日本・フィリピン間の学術交流及び相互理解の促進への寄与」。叙勲は昨年11月3日付で発令されていたが授与式は延期になっていた。

 イネス・マリャリ博士はダバオ市出身の日系3世。01年からフィリピン日系人会学校の運営責任者として関わり、以後ミンダナオ国際大学の設立(02年)、ミンダナオ国際大学学長(10年~現在)と日本語教育など日本と関わる教育活動を推進するとともに、フィリピン日系人連合会会長(12年~現在)として日系人の国籍回復にも精力的に尽力してきた。

 外務省在ダバオ総領事館の石川義久総領事は、「3世として日系人の地位向上、さらに若い世代へのスポーツや音楽を含む教育的支援を通じて日比の二国間の友好関係強化に貢献されてきた。日系人会連合会会長としても、日本人の子孫に対して積極的にインタビューを行い国籍回復に努めてこられた。また毎年恒例のダバオ市における慰霊祭を組織し支援してこられた」ことなどを受賞理由に挙げ、表彰状、メダル、花束を授与した。

 イネス博士は「天皇陛下によって公認された旭日章を授与されることに大変な栄誉と感じます。70才位で叙勲される方が多い中で私は最も若い一人であることを嬉しく思います。日本人の血は受賞の要件ではありませんが、日本人の誇りをより強く感じます。この受賞を原動力にして、日系人の地位をさらに高める活動をしていきたい」と挨拶した。

 また、日本の外務省、大使館、総領事館に加え、ダバオ生まれで自分を娘のように支援してくれた内田達夫氏へ感謝の言葉を述べ、また日本フィリピン企業協議会(徳光義弘代表)、日本フィリピンボランティア協会(網代正孝元会長)、フィリピン日系人リーガルサポートセンター(猪俣典弘代表理事)、日本財団、国際交流基金等、長年支援をしてきた団体へも感謝の言葉を述べた。

 さらに、(比日系人会、比日系人会インターナショナルスクール、ミンダナオ国際大学の)同僚たちに対し、「皆で取った賞である」とも述べた。また、日系人に親切に接してくれた故安倍元首相へのお礼と祈りも捧げられた。 

 最後に、安倍元首相や日本政府の親切さに応えるため、この叙勲を原動力として、日系人のさらなる地位向上のための新しいプログラムに取り組むこと、質の高い教育を提供し、比日の架け橋になるリーダーを育て続けていくことに決意を表明して挨拶を結んだ。

 ▽未来志向の叙勲

 長年、日系人の身元捜し国籍確認に尽力してきた猪俣典弘氏(52)(フィリピン日系人リーガルサポートセンター代表理事)は、「これまでは日系2世でも功績のあった方が受賞されてきたが戦後の精算という側面があった。イネスさんは3世で次世代を育てる未来志向(の授与で)もある」と意義を語った。

 式典にはイネスさんの親族のほか日系人会インターナショナルスクール、ミンダナオ国際大学、ミンダナオ日本人商工会、大使館及びダバオ総領事館、マスコミ関係者ら約50名が招待された。

 15年、安倍首相=当時=はイネス氏らを迎え国籍の無い日系人調査の必要性を理解し、その結果外務省はイネス氏らの陳情した調査に急いで関わり始めた。天皇の即位の礼にもイネス氏は招待されている(他2名はドゥテルテ大統領とダバオ市のサラ市長=当時、現副大統領)。イネス氏は「日系人会インターナショナルスクール及びミンダナオ国際大学を安倍首相が(17年1月に)訪問された際の感動は忘れることが出来ない。今回の事件で日系人コミュニティのみならずフィリピンは友人・支援者であった偉大なリーダーの喪失を悲しんでいます」と悼んだ。(ダバオ・太田勝久)

社会 (society)