大統領が会計検査院を批判 議員ら反論、独立監査めぐり混迷
コロナ対策予算の一部の会計処理が不適切だとする会計検査院を大統領が批判
保健省の2020年新型コロナウイルス対策予算のうち673億ペソの会計処理が不適切との年次監査報告書を会計検査院(COA)が公表した問題で、ドゥテルテ大統領はドゥケ保健相を擁護する一方で、会計検査院を「くそったれそのものだ」と痛烈に批判した。これに対して、上院議員や同院関係者らは会計検査院を擁護、問題は保健省の予算執行をめぐる疑惑から、独立した監査のあり方にも広がり、混迷を深めている。
ドゥテルテ大統領は16日夜の国民向けテレビ演説で、保健省の予算執行について「書類上の不備があったという問題で、公金が盗まれたわけではない」と汚職を否定し、ドゥケ保健相の罷免を求める声には「拒否する」と明言。「私の内閣には、横領を働くようなメンバーはいない」と閣僚への信頼を表明し、会計検査院の監査報告書は「すべて無視するように」と閣僚に指示した。
大統領は、コロナ禍の
「緊急事態」においてコロナ対策の仕事は「進行中で、まだ文書化されておらず、監査はすべきでない。報告書の公表は公平ではない」と会計検査院を批判。最終的に疑惑が判明した場合には「裁判所に告訴すればよい」と述べ、これまでに同様の事案で会計検査院が敗訴した例が3度あることも指摘した。
ABS─CBN電子版によると、大統領の発言に対して、11年から15年まで会計検査院長を務めたハイディ・メンドーサ元国連事務次長が反論。「監査報告書は、保健省で汚職があったとは書いていない」と大統領の発言の一部を認める一方で、同院は政府機関による公的資金の使途を精査し報告する独立した権限を持っており、「世界の指導者は、最高監査機関の権限を尊重し、認識している」と大統領を批判した。
パソコン4台に70万ペソ
年次監査報告書の公表も「政府機関との間の長い調整過程を経て初めて発表されるもので、早すぎる開示はない。報告書は政府機関の業績、国民がどれだけ政府機関を信頼できるかを示すものだ」と説明。「そもそも保健省が監査に適切に協力していれば、報告書の内容は違ったものになっただろう」とも述べた。
監査報告書によると、50億3800万ペソ相当のコロナ対策の購入品に関する適切な資料がなく、手続き上、政府調達改革法に違反し、1億9440万ペソ分については、政府に不利な購入だったとしている。また、政府公式サイトへの調達情報の非掲載、契約書の技術仕様書の非提供などが指摘されている。
パソコン4台の購入に70万ペソの支出を求めた文書も公開され、批判されたため、保健省はこの取引を棚上げし、実勢価格を調査しているという。
保健相は下院で反論
議会でも、ホンティベロス上院議員(野党・アクバヤン市民行動党)が「監査委員会が独立した憲法上の機関であり、その任務の遂行を妨げてはならないことを大統領は知るべきだ」と批判している。
一方、CNNフィリピン電子版によると、ドゥケ保健相は17日、下院公会計委員会のオンライン公聴会で「保健省は、説明に必要な書類を提出する前に、殴られ、血を流したようなものだ。緊急事態の下で活動していることを考慮して、監査にもっと余裕を持たせることができたはずだ」と反論している。(谷啓之)