日本供与のワクチン到着 アストラゼネカ製112万回分
日本が比に寄贈するアストラゼネカ製ワクチン112万回分がマニラ空港に到着
日本政府がフィリピンに供与する新型コロナワクチンが8日夜、全日空機でマニラ空港に到着、ドゥテルテ大統領も出席した引き渡し式が行われた。今回寄贈されたのは日本で製造された英アストラゼネカ社製のワクチン112万4100回分。日本からワクチンが比に寄贈されたのは今回が初めて。
ドゥテルテ大統領はビリヤモール空軍基地で行われた式典で「公平なコロナワクチン接種ができるよう努めているフィリピン政府に協力してくれた日本政府と菅義偉首相に感謝したい」と述べた。
日本政府を代表して式典に参加した在比日本大使館の中田昌宏公使は菅首相の声明を代読した。菅首相は声明で「日比国交回復65年、戦略的パートナーシップ共同声明から10年の節目を迎え、日本は兄弟よりも深いつながりを持つ友人であるフィリピンと一致してパンデミックがもたらす前例のない困難を乗り越えられるよう努力する」と両国の協力関係を強調した。
日本政府によるワクチン寄贈について、フィリピン日本人商工会議所の藤井伸夫副会頭はまにら新聞の取材に対し「喜ばしいことだ。つつましくルールを守りながら感染を比較的抑えているフィリピンでもワクチンが不足し地方自治体を通じたワクチン接種プログラムが一部接種を延期するなど影響が出ていたので、少しでも役立つのではないか」と評価した。
フィリピンの在留邦人の間でもワクチン接種が進んでいない状況について、藤井副会頭は「職域接種を進めるサンミゲルやアヤラなどの財閥系企業では関連する日系企業社員も接種できると聞いているし、ラグナやカビテなどのエコゾーンに進出する日系の大手企業でも職域接種を検討している。日本人だけを対象にして接種しようとの考えは日系企業にはなく、比人社員も含めて平等な接種が行えるよう、時間をかけて準備しているようだ」と述べている。
一方、アストラゼネカ社のワクチンは血栓などの副反応による死亡例が報告されていることから、日本の厚生労働省は薬事承認はしているが、公的接種に現段階では使用していない。このため「自国で使用していない懸念のあるワクチンを他国に提供するのは、間違ったメッセージを伝えかねない」(立憲民主党・今井雅人衆院議員)との批判も日本国内ではある。ただし、比では同社製のワクチンも接種されている。
日本による海外へのワクチン供与は台湾などを含めて比が5カ国・地域目。時事通信によると、9日には6カ国・地域目となるタイへも空輸される。(澤田公伸、石山永一郎)