開催すべきか、やめるべきか 東京五輪のジレンマ
東京五輪開催まで2カ月を切った。五輪スポンサーの1社である朝日新聞は「東京五輪中止の決断を首相に求める」と題した社説を掲載し、(1)人々の健康が最優先(2)五輪開催は深刻な帰結をもたらしかねない「賭け」(3)五輪憲章の空文化──という3点を理由に開催反対の論陣を張った。
新型コロナ変異種が世界で猛威を振るうなか、約9万人の選手と関係者が日本に入国することになる。日本には、五輪開催により日本人の健康が損なわれ、ワクチン接種が進んでいない中で感染を拡大させる「スーパースプレッダー」イベントになるのではないか、との懸念がある。
経済界のリーダーたちも「より大きなものを失う」「東京五輪は自殺行為」などと発言している。こうした危惧を背景に、朝日の社説は「人々が活動を制限され困難を強いられる中、五輪を開く意義はあるのか」と疑問を呈した。
国際コンサルティング会社ケクストCNCによる国際世論調査では、五輪開催反対の割合は日本56%、英国55%、ドイツ52%、スウェーデン46%、フランス37%、米国33%という結果となっている。
一方、フィリピン五輪委員会の参加への決意は固い。マニラ市は代表団730人のワクチン接種を約束している。五輪はいつもテレビで高い視聴率を得ており、比では五輪開催に前向きな人が多数派なのは想像に難くない。
しかし、パンデミックの経験はより深い同情を可能にした。日本人と懸念を共有することは世界にとって難しいことではない。(5月30日・マニラブレティン)