首都圏の病院 入院困難に 20カ所回って駐車場で死亡も
新型コロナ感染者が増大、首都圏の病院では新規患者受け入れが困難に
国内の新型コロナ感染者数が連日1万人を超えるなど感染拡大が続く中、首都圏の病院では新規患者の受け入れが困難になっている。ケソン市のフィリピン肺センター病院(LCP)では集中治療室やコロナ病棟が定員を超えたため、新規患者の受け入れを原則的に停止した。感染して呼吸困難になった高齢者を首都圏20カ所の病院に家族が連れていったが全て受け入れを拒否され、病院の駐車場で亡くなったケースさえあり、首都圏の「医療崩壊」は現実化している。
4日付英字紙マニラタイムズによると、パラニャーケ市で陽性が判明した後、先月27日に呼吸困難に陥った父親を娘らが救急車両で首都圏20カ所の病院に連れていったが、どこも満員で、入院を拒否された。娘は保健省が運営するコロナ患者の入院先を調整するホットライン「ワン・ホスピタル・コマンドセンター」に連絡したが「どこも空いていない」と言われ、結局、父親は医療を受けられずに病院の駐車場で死亡した。
肺センターのフランシスコ報道官は4日、ラジオ番組のインタビューで同病院の集中治療室が定員の2倍、コロナ病棟(55床)も定員に達しており、外来病棟を閉鎖し重篤でないコロナ患者の受け入れを中止していると明らかにした。同報道官は「重篤な患者を少しでも受け入れられるようベッドを増やし、酸素吸入器などの設備も増やしている」と説明している。
フィリピン腎臓移植研究所も定員に達するなど他の公立病院も満床状態だ。保健省は3日、「首都圏にある17カ所の公立病院はまだ稼働している」と声明を出したが、入院患者の治療に専念するなど新規患者の受け入れは極めて限られている状況だ。
▽近郊州でも満床に
首都圏の近郊州や地域でも医療施設がコロナ患者で満床になりつつある。
全国私立病院協会のグラノ会頭は4日にラジオ番組に出演し「カラバルソン地域やルソン地方北・中部の第2地域、第3地域でも病院が満杯になり始めている」と指摘。これら病院で入院している患者の多くが軽症か中程度の症状だが、他に移送させる場所が少なく、医療スタッフを拡充することもできないために病床の増設は困難だという。
保健省は3日、世界保健機関(WHO)と国連児童基金の支援を受けて、簡易テント式病棟を首都圏の公立病院で緊急設置すると発表、まず肺センターを含む8病院で設置を進める。
また、比赤十字社も声明を発表し、公立や民間の学校校舎を隔離施設に転用し、軽症患者などを移送するよう首都圏の首長らに呼びかけた。
一方、保健省は4日、国民に対して、コロナ症状が疑われる場合にはまず会議アプリを使った遠隔診療を受けたり、居住するバランガイ(最小行政区)にある保健緊急対応チームに連絡を取り、適切なアドバイスと施設への紹介をしてもらうよう呼びかけている。(澤田公伸)