50人以上が感染 重症者も リヤドのOFWでクラスター
サウジアラビアのOFWが新型コロナクラスター。50人以上が感染、重症者も
海外フィリピン人就労者(OFW)を清掃員としてサウジアラビアの家庭に派遣するリヤドの人材会社「モウェン・ヒューマン・リソーシズ」で、比人50人以上が新型コロナウイルスに感染、大規模なクラスターが発生している。重症患者がいるにもかかわらず、医師や看護師によるケアも無く、感染者らは不安な日々を過ごしている。
モウェン社と2019年7月から2年間の契約を結んでいるマリアさん(仮名、30代女性)によると、同社所有のアパートに住み、1日8時間、8つの家庭を回って清掃に当たってきた。
アパートは4棟(b2〜b5)あり、清掃員は計400人以上。大多数が比人で、インド人、インドネシア人も少数いる。このうちの1棟(b2)には、会社や派遣先の家庭と問題があり、雇用を取り消された元清掃員らが滞在しているという。
▽帰国困難者が多数
自身もコロナ感染したマリアさんは「体調不良を訴え、会社に新型コロナの検査を求める同僚もいたが、会社側は検査を行わず、休みも与えなかった。会社の対応に苦情を言って契約を打ち切られた人もいる」と話す。
清掃員は月々300リヤル(3888ペソ)の生活手当を含め、1800リヤル(2万3325ペソ)を受け取る。2年間の契約満了時には3600リヤルのボーナスをもらって帰国できる。「そのため誰もが一生懸命働く。契約を打ち切られた人は、帰国したくても旅費も工面できない」とマリアさんは語った。会社は比政府によるOFW帰国事業を待っているという。
▽医療ケアもなく
同僚がサウジ保健省に報告したことで、モウェン社は19日午前に全従業員のPCR検査を実施。翌20日にはb4棟で26人、24日までにb5棟でも27人の感染が判明している。
マリアさんの症状は発熱、味覚障害、頭痛に加え、呼吸しようとしてもゼーゼーと音がして苦しい。「友人はもっとひどい。せきが止まらず、食欲も失せ、ただ横たわったままだ」という。
当初の3日間は検査で陽性と判定された人がb3棟の1、2階に隔離されたが、22日夜から保健省が用意したホテルに移された。
ベットもないリビングのような1室に5、6人が収容され、床に布団を敷いて眠る。一歩も外には出られない中、各自買いためていた食料で自炊している。医師や看護師の訪問もなく、モウェン社が24日にようやく各部屋に1箱ずつ、少量のビタミン剤と痛み止めを届けただけだという。
▽せかされる復帰
19日の検査結果が陰性だった同僚は、濃厚接触者にもかかわらず、会社の指示で仕事を続けている。24日には再度の検査もなく、仕事への復帰を命じられた陽性者の同僚もいる。「同僚の多くは派遣先の家庭で感染したと考えており、不安を抱えている」とマリアさん。サウジアラビアでは比同様、検査費用は会社が負担する。「検査の遅れは会社が、私たちの健康よりも利益を優先したからだ。もしここで死んだら、遺体として帰国することさえかなわない」と涙ぐんだ。
25日現在、OFWの新型コロナ感染者累計は1万6040人、死者は1047人。中東アフリカ地域の感染者が8884人と過半数を占める。ワールドメーターによると、3月25日時点のサウジアラビア国内の累計感染者数は38万6300人、死者は6624人。(岡田薫)