民間の購入 禁止せず 大統領「国は責任もてない」
政府、製薬会社との3者協定に基づく民間企業のワクチン購入は認める方針
論議を呼んでいた民間企業のワクチン購入について、政府関係者は22日、政府、ワクチンメーカーとの3者協定に基づくものについては認めるとの方針を改めて表明した。一方で、ドゥテルテ大統領は民間企業が調達したワクチンで副作用が発生しても「政府は責任を負えない」との考え方を明らかにした。
民間企業のワクチン購入をめぐっては、新型コロナ予防接種プログラム法(共和国法11525号)の施行規則草案に、たばこ、酒類、砂糖入り飲料、乳児用粉ミルクなどの「シングッズ(健康を害する製品)」を製造・販売している企業が、従業員のためにワクチンを購入することを禁止する条項が保健省の提案で盛り込まれた。この案は「違法な条項を挿入しようとする悪意ある見当違いな試み」(ドリロン上院野党院内総務)などの批判を浴びていた。
この条項が20日の関係者協議で施行規則草案から削除されたことを、コロナ対策実施国家タスクフォース(NTF)の責任者でワクチン担当のガルベス大統領補佐官と、省庁間タスクフォース(IATF)広報担当のロケ大統領報道官が22日に明らかにした。一部上院議員やフィリピン乳幼児栄養協会(IPNAP)などは歓迎する意向を表明している。
ガルベス補佐官は「民間企業と地方自治体は共に、政府、ワクチンメーカーと3者協定を結んだ場合に限り、従業員や住民のために独自のワクチンを調達できる。副作用が出た場合には補償の責任は企業や自治体に委ねられることになる」とした上で、メーカーの中には、供給契約に免責条項がある場合にのみ、企業へのワクチン販売を承諾するところもあることも説明した。
ドゥテルテ大統領も22日、民間企業のワクチン購入について「メーカーが望んでいるのは、民間企業が購入したワクチンの責任を政府が負うことだが、それは不可能だ。そのような規定が法的に認められるとは思わない。立法権を持っているのは議会だけだ」と指摘。民間企業による輸送や取り扱いのミスなどを懸念し、「購入を民間企業に任せた時点で、政府はワクチンの取り扱いに対する統制、監視ができなくなる」とも述べた。
新型コロナ予防接種プログラム法は議会で緊急可決され、2月下旬にドゥテルテ大統領が署名。ワクチン接種に絡む訴訟からメーカーを免責するとともに、重い副作用など事故が起きた場合に備えた補償基金に5億ペソを充てている。(谷啓之)