「推定有罪」で過ち広げるな 危険薬物法改正
薬物犯罪に対する厳しい法律がすでにあるフィリピンで、議会下院は2日、包括的危険薬物法(2002年、9165号)をさらに強化するための改正法案(下院7814号)を圧倒的な賛成多数で可決した。一部の条項が憲法で保証されている刑事事件の「推定無罪」原則を覆すものだと法曹界が指摘するなど、麻薬戦争の進め方に警鐘が鳴らされている。
改正により、薬物容疑者とされる可能性のある人物の範囲が拡大された上、摘発する側が有罪を証明する負担を負うのではなく、容疑者が無実を証明しなければならなくなる。麻薬取引を保護するために「影響力、力または地位」を使用する人々を、密売幇助(ほうじょ)者とする改正は取り締まりの武器になりうるものの、「推定無罪」の原則を否定しないように、文言は書き換える必要があるかもしれない。
「そうでないと証明されない限り」、禁止薬物の販売、配達、または配布のため現場のすぐ近くで発見された人は、違法行為に「関与していたと推定される」という規定もやっかいだ。おとり捜査中に射殺されたファーストフード店スタッフは麻薬犯罪の責任を負うことになるだろうか。麻薬製造室が秘密裏に設置された不動産物件の所有者や賃貸人も「過失」があれば、責任を負わされる。容疑者とみなされる人の幅が広がる。
麻薬取引への関与を疑われ、逮捕に抵抗したとされるだけで、これまでに何千人もの人が殺されており、司法相自ら、国連人権理事会で比の麻薬戦争で過ちが犯されたことを認めたばかりだ。改正法案はさらに多くの過ちを犯す機会を広げている。(6日・スター)