本当に中間層の国になれるか? 貧困と背中合わせの比社会
民間世論調査会社ソーシャル・ウエザー・ステーション(SWS)によると、今年の第3四半期で飢えを経験した家庭は約230万で全家庭の9・1%にあたり、過去15年で最も低い水準だったという。自己評価による貧困家庭の割合も第2四半期の45%から42%(約1030万家族に相当)に減少したが、3月に記録した38%には及ばなかった。しかも、第3四半期は失業率が21・5%、つまり約1千万人に上昇している。中央ビサヤ地域では先週、最低賃金が404ペソに上げられたが、賃上げ幅はたったの18ペソだった。生活必需品が値上がりするなか、どうやって404ペソで暮らせというのか? 医療費や公立大学の学費も多くの比人にとって、いまだ負担は大きい。
比は今でも発展途上国のままだ。多数の国民が最貧困のレベルで暮らし、苦労して中間層の暮らしを手に入れた者も、その生活を失業や疾病で、いとも簡単に失いかねない。
貧困対策向けの国家政策としては条件付き現金給付事業 (4Ps)があり、現在約420万世帯の家庭が支援を受けている。同事業は今年前半に「国家貧困削減戦略および人材投資計画」の一環として法制化され、世界銀行から3億ドルの融資も受けることになった。この融資で得た資金は、420万人の子どもたちへの栄養改善などの支援プログラムに充てられるという。
世銀は比の貧困率が低下しているとみているが、2018年の報告では、「2000年から15年の間に労働者1人当たりの生産高は50%以上増えたものの、実質賃金の増加はゼロで、労働者は生産性向上の利益を得られていない」と指摘している。
それなのに、賃上げを求める労働者たちはさらなる生産性向上を要求されているのだ。政府が掲げる発展に向けた長期目標では、2040年までに比を貧困のない中間層の国にするとしているが、本当に正しい道を進んでいると言えるだろうか。(2日・タイムズ、マリット・スティウス=カブゴン)