元厚生長官ら20人起訴へ 児童8人死亡の責任追及
デング熱ワクチンに関し児童死亡の責任があるとガリン元厚生長官ら20人を司法省が起訴へ
司法省は2日までに、デング熱ワクチンの接種が原因とみられる児童8人の死亡に責任があるとして、ガリン元厚生長官ら20人を過失致死容疑で起訴する方針を固めた。ワクチン接種は、アキノ前政権時代の2016年4月から公立学校や首都圏4市の診療所などで始まり、83万人以上が接種を受けた。その後、製造元の仏製薬大手サノフィ社が副作用について警告したことを受け、ドゥテルテ政権下の17年12月に中断されている。
司法省の委員会が発表した声明では「ガリン氏らが正規の調達方法を取らずにワクチン購入のため35億ペソを支出し、無謀で軽率な行政措置を取った」と認定。「許しがたいほどの注意と慎重さの欠如」が児童8人死亡を招いたと述べている。
起訴される可能性があるのはガリン氏のほか、厚生省の医師9人や食品医薬品局(FDA)の職員2人、サノフィ社の社員6人など。司法省によると、デング熱ワクチンはFDAに登録された利用可能な医薬品の処方集(PNDF)に入っておらず、政府による購入は違法という。
パネロ大統領報道官は2日、政権として干渉せず司法手続きを見守るとの声明を発表した。サノフィ社はロイター通信に対し「司法省の見解には全く同意できない」と述べ、裁判で争う姿勢を示している。
デング熱ワクチンと接種を受けた児童の死亡については、遺族と国選弁護士事務所(PAO)の法医学者らが因果関係を強く主張、フィリピン総合病院の調査特別委員会も児童3人がワクチン接種に関連して死亡したと発表している。
一方で、厚生省は「関連性は明らかになっていない」と繰り返し指摘、上院ブルーリボン委員会の聴聞会に出席した米国のデング熱研究者スコット・ハルステッド医師は「解剖により接種との因果関係を明らかにすることはできない」と明言している。
サノフィ社はデング熱に未罹患者への接種について「(接種の効果がなく)感染した場合は入院リスクを高める」が、接種自体が深刻な症状をもたらすことはないとしている。
ワクチン調達に当たっては、15年12月にアキノ前大統領が仏サノフィ社の関係者と面会、約1カ月後にワクチン購入が承認され35億ペソが支出された。
サノフィ社は未使用分のワクチン代を比政府に返金したが、比厚生省は使用分を含めた全額返金を要求している。(森永亨)