国民皆保険法案に署名 WHOも歓迎 課題は財源
大統領が国民皆保険制度の実施を定めた共和国法に署名。予算確保が急務
ドゥテルテ大統領は20日、すべての国民を対象として医療サービスの一部無料化や負担軽減を盛り込んだ国民皆保険法に署名した。同法の施行によって今後、国民健康保険の保険料を支払っていない国民も「間接的加入者」とみなされ、無料で医師の診断や検査などが受けられるようになる。世界保健機関(WHO)はこれを受けて21日「高度な健康サービスを最低限のコストで提供しようとするすばらしい内容だ」と歓迎する声明を発表した。
ただし、財源の確保にはなお問題があると指摘されており、パネロ大統領報道官は「施行は段階的に進めていくことになるだろう」と声明で述べている。
署名された法案は「ユニバーサル・ヘルスケア法」と呼ばれる共和国法で、保険料を支払って得られる国民健康保険証(フィルヘルス・カード)を持たない国民も基本的な医療サービスを受けられるようにする。同法では特にバランガイ(最小行政区)保健所の確立を優先事項としており、軽い疾病などは病院より保健所に対処させる計画だ。
同法はまた、医療スタッフ確保のため、政府の奨学金を得て大学医学部や看護学部を卒業した者には最低3年間の公立病院での勤務を義務付けた。
21日に比の英字各紙によると、同法の施行には初年度に2570億ペソの予算が必要とされているが、まだ大統領が署名していない2019年予算には2170億ペソの関連予算しか計上されていない。そのため不足する400億ペソの予算確保が急がれている。厚生省はこのほど、「国民皆保険制度を実施する予算を確保するためタバコ税や酒税のさらなる引き上げを目指す」と発表したが、具体的な措置はまだ取られていないという。(澤田公伸)