70万年前の人類の痕跡を発見 ルソン島、入植期大幅塗り替え
ルソン島で70万年前の人類の痕跡を示す研究が公開。これまで6万7千年前まで確認されていた
ルソン島における70万年前の人類の痕跡を示す研究が2日、科学誌ネイチャー(電子版)に公開された。フランスの国立自然史博物館などによる研究チームによるもので、カリンガ州リサール町で石器や狩猟されたとみられる動物の遺骸が発見された。これにより、同島の人類の存在がこれまでカラオ洞窟の人骨で確認された6万7千年前から大幅にさかのぼることになる。
現場で発見されたのはオオトカゲ、ハコガメ、シカ、初期のゾウ類であるステゴドン、サイの遺骨400本以上と石器57個。サイの遺骨はほぼ全体が発掘され、骨には食料とするために処理をされた跡が残っていた。電子スピン共鳴法により年代測定がなされ、約70万9千年前と鑑定されている。70万年前までのルソン島は寒冷期でも大陸とはつながっておらず、原人の可能性がある人類がなんらかの手段で海を渡ったとみられる。
論文の筆頭著者である同博物館のトマ・エンジコ准教授は米テレビ局CNNのインタビューに「動物を処理した痕跡はとても良い驚きだった」と述べ、発見の重要性に関し「まずとても古い人類の存在がフィリピンで発見されたことと、そして中期更新世の初めまで孤立していた島への入植の証拠が見つかり、現生人類以外の人類(がいた)とみられることが重要だ」と述べた。
その上で、「ルソン島の発見はインドネシアのフロレス島のように、体が小さくなった人類が入植をしたことを示すのかもしれない。カラオ洞窟での発見と今回の発見との間には巨大な時間のすき間があり、多くの問題がある」と語った。
インドネシアのフロレス島では約70万年前の地層から人類の下顎と歯の化石が2014年に国立科学博物館の海部陽介氏らにより発見されており、身長が1メートルほどのフロレス原人の祖先とみられている。
6万7千年前とみられる足の骨の化石は、2007年にカガヤン州ペニャブランカ町のカラオ洞窟で発見された。現生人類に近い部分も指摘されているが、原人など詳しくは分かっていない。(森永亨)