ASIA WATCH
中国に傾くASEAN諸国
先週末に当地で開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の議長声明では、南シナ海情勢における中国への懸念の表現が弱まり、中国の影響力に引き込まれる国々が増えている現状が示された。戦略地政学上の根本的な変化の加速を明確に示すサインになっている。
トランプ米大統領は先週末、フィリピンとタイ、シンガポールの首脳と相次いで電話会談した。トランプ氏が掲げる「米国第一主義」により、オバマ前政権のアジア「重視」姿勢が破棄されたと不安視していた向きには歓迎される動きだ。
こうしたなかで一部の国は中国に傾斜しており、南シナ海問題で対立激化を避けつつ、中国の「一帯一路」経済圏構想に沿ったインフラ投資の獲得を図っている。米国の環太平洋連携協定(TPP)離脱の穴を埋めるような形だ。
加えて、トランプ氏と中国の習近平国家主席の予想外の接近は、中国に傾いていくアジア諸国の安心感を強めた可能性がある。
トランプ氏は11月、アジアで開かれる2つの首脳会議に出席する。ただ、東南アジア諸国は、押しの強い中国に対抗する盾として米国がどこまで信頼できるか見極めようとしている。ASEAN諸国の外相らは、4日にワシントンで開かれるティラーソン米国務長官との外相会合で答えを模索する。(マニラ・ロイターES=時事)