時代に合わない規制 退職年金増額
社会保険機構(SSS)の退職年金支給額を一律2千ペソ増額する法案に対してアキノ大統領が拒否権を発動し、世論が抗議ムードに変わったことに対し、このままではSSSが「破産してしまうから」と拒否権発動の理由を説明する声が数多くあがった。
単純に計算すれば、法律が成立すると年金支給の支出額は年間160億〜260億ペソの追加となる。13年以内に年金基金が尽きる計算という。
これは事実ではない。1997年に成立した共和国法8282号、いわゆる社会保障法によると、どんな理由があれ政府はSSSを負債なく維持する責務がある。SSSが受給資格者に年金を支給できなくなる恐れがある場合、国会は単年度国家予算を変更し、SSSを支えるよう義務付けられてもいる。
問題を解決するための良い方法は、基金の各支出に対する運用割合を再考することだ。現行の規定によると、SSSの徴収した年間保険料のうち、12%は「管理運営費」に充てられる。つまり、SSSの役員や従業員の月給のほか、ボーナスや各種手当てにも使われているということだ。最新の統計が正しければ、この管理運営費は年間でだいたい36億〜48億ペソに上る。
もう一つ考慮されるべきは、20年前に設定された、投資などによる準備基金の資産運用に対する上限を考え直すことだ。
上限は資産運用にからむさまざまなリスクを考えて設定されたが、20年前と比べてフィリピンの経済は格段に変わった。過去の規定は、今や安全策ではなく障害になっているかもしれない。
国会は、今後の提案をする前にSSSが現状で立ちゆかなくなっている現実を観るべきだし、SSSは、なぜ機能停止しているのかを説明するべきだ。(21日・マラヤ)