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5月4日のまにら新聞から

土壇場の奇跡 死刑延期

[ 750字|2015.5.4|社会 (society)|新聞論調 ]

 シンガポールで起きた殺人事件の容疑者として、逮捕・起訴されたフィリピン人海外就労者(OFW)の女性が1995年に死刑執行されたことは、OFWの心に深い悲しみを残し、抗議の声が嵐のように巻き起こった。違法薬物をインドネシアに持ち込もうとしたとして、比人女性(30)の死刑が延期された今回の事件は、比国内における司法制度の公正さが、OFWの正義追求にいかに重要であるかを教えてくれた。

 比人女性を救ったのは、違法薬物をあっせんする国際シンジケートについて、証言できる可能性が出たためだ。女性の違法就労をあっせんしたとされる比人の容疑者夫婦は、死刑執行延期が決定する前日、国家警察ヌエバエシハ州本部に出頭した。これに呼応してインドネシア政府はアキノ大統領の要請を受け入れた。検察側証人としての彼女の証言は、シンジケートの主犯格を特定し、薬物の違法あっせん阻止に向けた一助となるかもしれない。

 なぜ今頃になって違法就労をあっせんしたとされる比人夫婦が現れたのか。しかも逮捕ではなく出頭。それは命の危険を察知したからだ。この出頭がなければ、女性は今頃死刑を執行されていただろう。

 これを機に、比の司法当局はインドネシア政府の英断に見合った捜査結果を出さなければならない。でなければ、死刑執行の一時停止が永久に切り替わる機会をなくすことになる。

 OFWの実情について、比・インドネシア両国はある意味で同志である。両国の家政婦は苦境を共有している。インドネシア政府と連携し、OFWの保護と違法薬物の根絶に取り組まなければならない。今回の死刑執行延期という「奇跡」については弊紙も女性の家族や国民と喜びを分かち合い、最終的に女性が社会復帰できることを切に望んでいる。(4月30日・インクワイアラー)

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