米軍に有利な協定 EDCA締結
東アジア4カ国歴訪の最後の訪問地マニラをオバマ大統領が去った日に「防衛協力強化に関する協定」(EDCA)全文が大統領府から公開された。この文面を読むと、比米間の歴史を垣間見ることができ興味深い。フィリピン側に有利な内容も含まれるが、総体的には長期的な米国の戦略をより利する内容となっている。
協定の交渉担当者が過去の法令や出来事に注意を払ってきたことは、協定の非核条項や環境条項を見れば明らかだ。協定第4条第6項では、比憲法を遵守し米軍による核兵器の持ち込みを禁じている。しかし、米政府が従来から核兵器の持ち込みや有無について一切公表しないという政策を堅持しているため、その実効性については疑問がある。結局、米軍の艦船や航空機は適切な能力を持って核兵器を搭載し続けるだろう。
もう一つ興味深いのは協定第9条の環境条項だ。米側が「比の環境保全や公衆安全衛生を定めた国内法を遵守する」と強調されている。これは明らかに、1992年に米軍基地が比から撤退した際に、その周辺で有害物質が大量に遺棄されたことが問題化した事実を念頭に定められている。
しかし、この協定の最も核心部分は、なぜ米国が比の軍事施設を定期的に利用しなければならないのか、その必要性を説明する部分があるはずだが、その説明は一切含まれていない。協定第1条で、米軍が比で実施できる活動内容を定めているが、これらは99年の訪問米軍地位協定ですでに規定されている。米国の長期戦略は、台頭する中国に対抗するためアジア地域での米軍プレゼンスの強化を図ることであり、比に基地を再設置せずにプレゼンス強化を果たすためにはこのような協定が必要だっただけなのだ。(2日・インクワイアラー)