真相解明は前途多難。首都圏鉄道の賄賂疑惑
首都圏鉄道(MRT)3号線車両増強事業の受注を目指したチェコ企業が、フィリピン政府高官らから巨額の賄賂を要求されたとの疑惑は、「真っ直ぐな道」を標榜するアキノ政権による「グッドガバナンス(良い統治)」に矛盾している。
3千万ドルという賄賂疑惑にアキノ大統領の親族や側近が関与しているというチェコ駐比大使の主張は、現政権側から即座にはねつけられた。逆にチェコ大使が、国家捜査局や行政監察院から「捜査に協力しない」と非難の集中砲火を浴びることになった。アキノ大統領の側近が守られているのは火を見るより明らかだ。
大統領の親族はチェコを訪問したとされるが、車両増強事業の受注を目指したチェコ企業との関係については一切否定した。
疑惑の首謀者とされるMRT総裁は現職にとどまり続け、現政権からの手厚い「保護」を受けている。それよりむしろ、守られなければならない。なぜなら、現政権が彼を見捨てれば、大統領の親類の疑惑を暴露される可能性があるからだ。チェコ大使によると、賄賂を渡していれば受注は確実とされていたが、実際に落札したのは中国企業だった。
チェコ大使は、チェコ企業との契約を破棄した現政権の高官らを追及しているようにもみえる。
そして今、大統領府、国会議員、ビジネス界から矢継ぎ早に非難を浴びている。それでもなお、大使が留任しているのはチェコ政府の支援があるからだろう。だが同時に、首謀者とされるMRT総裁とて同じである。
アロヨ前政権下で2007年に浮上した政府ブロードバンド網構築事業(NBN)と同様、事態はこう着状態にある。(12日・トリビューン)