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6月26日のまにら新聞から

戦争の「付帯的損害」

[ 700字|2006.6.26|社会 (society)|新聞論調 ]

NPA撲滅作戦強化

 アロヨ大統領が比共産党軍事部門、新人民軍(NPA)を二年以内に撲滅すると宣言した。近く始まる「対NPA全面戦争」では、民間人が戦闘に巻き込まれて死傷する事態も予想される。ゴンザレス司法長官によると、これら民間人の被害は「不可避な付帯的損害」という。

 「付帯的損害」という表現は、ベトナム戦争当時や米軍のイラク侵攻の際、民間人の日常生活を破壊した「事故」を説明・正当化するため使われた言葉だ。司法長官発言は、全面戦争で起こりうる「事故」を前提にしているわけだが、二年以内のNPA撲滅という性急な目標を達成するため、「偶発」とは決して言い切れない付帯的損害が予想される。

 全面戦争開戦前の現在でさえ、左派系活動家が毎週のように殺害され、軍・警察の事件関与が指摘されている。戦争が始まれば、殺害される活動家は今の数倍に達するだろう。

 武装したNPAの構成員らは戦死覚悟の上で、軍・警察の暴力に暴力で対抗できる。しかし、合法的手段で信条を貫こうとする非武装の活動家はどうか。自らの生を賭するだけの対抗手段を有さない者に対し、戦闘を仕掛ける行為はフェアではない。

 掃討作戦を進める上で国軍は、攻撃重点地域をパンパンガ州ルバオ、サスムアン両町など、NPA構成員やシンパの多い一部市町に限定するという。ベトナム戦争などでは、「ゲリラ掃討」の名の下に全村民が殺害され家々が焼かれた。対NPA全面戦争で、果たして軍・警察はゲリラと民間人をどのように見分けるのか。われわれは、軍・警察にじゅうりんされる村と「NPAシンパ容疑」で村人が連行される光景を黙って見守るしかないのだろうか。(20日・インクワイアラー)

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