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1月16日のまにら新聞から

若者への福祉拡充を

[ 683字|2006.1.16|社会 (society)|新聞論調 ]

下宿屋火災の悲劇

 新年早々、女性二人を含む八人の若者がマニラ市のユニバーシティ・ベルトにある下宿屋で発生した火事に巻き込まれ死亡した。このうち七人は同じ部屋で若い命を落とした。隣人たちが部屋のドアをたたいて火事を知らせようとしたが、飲酒した後だったため起こすことができなかった。こんな事件が起きるとマスコミは決まってこの地区やケソン市のディリマン地区に密集している下宿屋の危険な状況を大々的に報道する。

 確かにこれらの下宿では狭い部屋にベッドが三段、四段に置かれ、多数の学生や勤め人がプライバシーもなく共同生活を送っている。扇風機や水道水を十分に使えない生活の環境は劣悪で、病気や様々な悪徳もはびこることになる。将来ある若者がじっくり勉強できるような環境ではないのだ。

 火災に遭遇した男女を含め若者たちを勉学のために首都圏に送り出した親たちは、息子や娘に将来の夢や希望を託したはずだ。この国の緊密な家族関係からすると、子供を一人で都会に送り出すことは親にとり容易なことではない。親の期待も背負って、子供たちは新しい生活に馴染むよう努力するのだが、火災で命を落とすなど悪魔のような都会には落とし穴が口を開けて待っている。

 私たちはこのような若者たちが国と民族の希望であると宣言し、彼らに対する福祉をもっと充実させるべきである。他国では若者に対し、奨学金や研究施設の拡充など彼らの将来性を開かせる十分な投資を行っている。フィリピン政府と自治体も下宿の防災対策だけでなく、学ぶ若者を取り巻く治安や衛生状況を直ちに改善すべきだ。(10日・インクワイアラー、リナ・ヒメネス・ダビッド氏)

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