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11月11日のまにら新聞から

「戒厳令下」の外国人

[ 718字|2002.11.11|社会 (society)|新聞論調 ]

出入国管理局の人権侵害

 先日のコラムで私は「フィリピンは事実上の戒厳令下にある」と指摘した。裁判所の命令など適切な法的手続きを踏まずに逮捕され、資産を没収される危険が常にあるという意味だ。「実質的な戒厳令下」に置かれているという点では、外国人も例外ではない。出入国管理局による不当拘束という人権侵害を受け続けているのだ。

 フィリピン人は自分自身の人権が侵された場合、過剰なまでに反応する。しかし、他人に対する人権侵害には比較的無関心だ。出入国管理局による暴挙が放置されている要因の一つには、この国民の無関心さがある。また、外国人の多くが地元メディアにコネを持たず、世論に訴えるすべを持っていないことも人権侵害を誘発させている。身柄を拘束された外国人の訴えはわれわれの耳に届くことはほとんどない。それが実情だ。

 一例として、フィリピン退職庁会員協会財団の元会長が同局に身柄を拘束された事件を紹介したい。元会長は、五万ドルを国内行に預金して居住退職者ビザを取得した外国人退職者の一人だったが、同財団資産の運用益をめぐって退職庁幹部と対立。同庁の告発を受けた出入国管理局は、違法就労容疑で元会長の身柄を拘束。居住ビザまで失効させてしまった。財団の預金も財団側に無断で銀行経営者の口座へ移された。

 同局は①就労許可の取得を求める事前指導②居住者ビザ失効の通知︱︱などを一切行わないまま、突然身柄を拘束したのだ。これに似た事件は少なくない。今年四月には、フィリピン人妻と一緒にいる場面を無断で撮影された外国人男性が「ビデオテープを渡すよう記者らに迫った」というだけで身柄を拘束され、現在も同局収容所に収監されたままだ。(4日・インクワイアラー、ニール・クルス氏)

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