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10月27日のまにら新聞から

モール内礼拝堂

[ 1127字|2002.10.27|社会 (society)|名所探訪 ]

「礼拝と買い物」で客集め

 マニラ市マラテのアドリアティコ、マビニ両通りに挟まれた一画に大型ショッピングモール「ハリソン・プラザ」がある。その二階にある礼拝堂は、その名も「ハリソン・プラザ・チャペル」。モール内に建てられた礼拝堂としてはフィリピン初。整然と長いすが並び、ろうそくがともる礼拝堂内は、静かで落ち着いた雰囲気が漂う。客でごった返す他の場所とは対極をなしていた。

 ボランティアとして礼拝堂の運営に携わるティス・バニケットさん(55)らによると、礼拝堂はモール開業とともに一九七六年に設けられた。日曜日に教会での礼拝と買い物を一緒に済ますことができるため、集客力アップにつながった。

 モールは八三年に火事で全焼した。だが、教会も拡張して再建され、今では教区教会よりも礼拝に訪れる信者数は多いという。国民の約九割が信者という「カトリック教国」ならではの信仰心と「消費好き」な国民性をうまくとらえたアイデアだ。バニケットさんは「買い物を楽しみ、信者としての義務を果たすこともでき、まさに一石二鳥」と得意気だった。

 礼拝堂では日曜・祝日は六回、平日は二回ミサが行われる。月曜日にはカトリック系団体「エルシャダイ」にミサの場を提供している。平日午後五時半のミサをのぞくと、仕事帰りらしいバロンタガログを着た男性、ビニール袋を抱えた買い物客、外国人の姿も見られた。幼児から年寄りまで約百五十人が礼拝堂の席のほぼ半分を埋めていた。

 信者たちは神父の説教に真剣な表情で聞き入り、賛美歌が流れるたびに立ち上がったり、ひざまずいて祈りをささげる。同じモール内で買い物、食事、おしゃべりを楽しんでいる姿とは対照的である。フィリピン国民の間にカトリック教がいかに浸透しているかを垣間見るようだ。だが、「居眠り禁止」の張り紙があるにもかかわらず、ミサの最中に熟睡している人もいた。

 ミンダナオ島南西部サンボアンガ市にあるモール二カ所で連続爆破事件が起きるなど、現在、各地で爆破事件が頻発、モールへの客足も鈍りがちだ。しかし、信者らは「このモールは礼拝堂があり、神に祝福されているから大丈夫。神がテロを許すはずがない」「人間、死ぬときは死ぬ。ここで死ねことができれば本望」などと語り、意に介する風はなかった。

 しかし、モールの警備担当者は「神にばかり頼っているわけにはいかない」と警備強化に余念がない。入口での荷物や身体検査は格段に厳しくなった。警備員増員や隣接する二つのモールとの連携強化なども計画中。また、「地元住民には駐車係を買って出て運転手からチップをもらっている者がいる。彼らも不審者通報に協力している」という。今や、都心の大型モールはテロ対策の最前線となっている。(湯浅理)

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