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5月27日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 515字|2002.5.27|社会 (society)|ハロハロ ]

 法治国家の一員としてのアイデンティティーが、この国の人たちに薄いからかもしれない︱︱。そんなことを思ったのは、マカティ市内の交差点近くで、一台、一台の車の動きを見ているときだった。右に左に車線を蛇行して先を急ぐ乗用車、交差点直前で突然、客を乗り降りさせるジプニー、少し流れのよい左折用の車線に割り込んだ後、再び車線を二つ横切って右折しようとする大型バン……。その度に車の流れが滞る。

 誰しも目的地に早く着きたい、給料が歩合制のジプニー、バスの運転手は一人でも多く客を乗せたい。しかし、公道を走る場合、ルールがある。都市生活は市民が規則を守ることで秩序が保たれる部分が多い。それを守らないことが交通渋滞の一因になっていると思う。

 スペインの植民地支配前からスルー諸島やミンダナオ島南西部にイスラム教徒の王国があっただけで、フィリピン諸島には親族集団のバランガイしか存在しなかったという。だから、バランガイを越えた社会の規範を守るといった「遺伝子」が欠落し、車の運転にも現れているのではないか。たかが交通渋滞に歴史を持ち出すのは大げさだと笑われそうだが、この十年、さほど変わらない光景に、こんな仮説が頭をよぎった。(濱)

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